【6月12日 AFP】インド南部で、ぜんそくを治すため生きた魚を丸のみするという毎年恒例の伝統治療が今年も行われた。数千人が長い行列をつくり、涙目になりながら投薬を受けた。

 これは、薬草からできた黄色い練り物を魚の中に詰め、その魚を丸ごとのみ込めば呼吸が楽になるとされている、南部ハイデラバード(Hyderabad)に伝わる治療法で、毎年6月に行われる。

 5センチほどの魚を患者の喉へと滑り落としていく。患者は戻しそうになるところを耐えなくてはならない。魚を見て泣き出す子どもたちには、親たちがしばしば鼻をつまみ口を開けさせ、頭を後ろに反らさせるなどする。魚をのみ込んでから45日間は、厳格な食事療法を実践するよう指導される。

 治療を行うバティニ・ゴウド(Bathini Goud)さん一家によると、魚が通っていく際に喉が清められ、ぜんそくなどの呼吸器系疾患が完治するという。一家はヒンズー教の聖人から1845年に作り方を教わったとするこの秘伝の薬の配合を明かしていない。

 2日間にわたり無料で行われるこの治療を受けようと、インド全土から数千人が殺到する。投薬日は、6月中の夏季の季節風(モンスーン)の到来に応じて定められる。

 人権団体や医師らはこの療法を「非科学的」とみなし、不衛生で人権侵害に当たると批判しているが、ゴウド一家はそれを一蹴している。インド政府は毎年この「魚療法」のために列車を特別運行し、群衆の整理に当たる警察官も追加動員している。(c)AFP