【6月13日 AFP】かつて気温上昇による恩恵を受けた南極のペンギン3種のうち、2種の個体数が温暖化の影響で減少しているとの研究論文が12日、英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に発表された。

 現在、アデリーペンギンとヒゲペンギンの個体数は減少傾向にある一方で、ジェンツーペンギンの個体数は増加しているが、この理由はこれまでの科学的研究では解明されていなかった。

 今回発表された最新の研究によると、最後の氷河期が約1万1000年前に終わった後、この3種のペンギンはすべて個体数が増大したが、現在起きている気温上昇によって、これらのペンギンの食料供給が危機にさらされているという。

 英サウサンプトン大学(University of Southampton)大海洋地球科学部のジェマ・クルーカス(Gemma Clucas)氏はAFPの取材に「南極周辺で氷の減少が進んだことは、新たな営巣地の拡大につながったため、これらのペンギンにとっては好都合だった」と語った。

「だが現在の気候変動によって氷の減少がさらに進行し、その結果アデリーペンギンとヒゲペンギンがもはや十分な食料が得られなくなっている」

 アデリーペンギンとヒゲペンギンは、減少が進む氷の下に生える藻類を餌とするオキアミ(エビに似た小さな動物)を主食としているが、一方のジェンツーペンギンは食べられる餌の種類がより幅広く、海洋温暖化の影響が少ない魚やイカなども捕食する。

 論文の共同執筆者の1人で、米ウッズホール海洋研究所(Woods Hole Oceanographic InstitutionWHOI)のマイケル・ポリト(Michael Polito)氏は「われわれが目にしているのはまさに『運命の逆転』であり、南極半島(Antarctic Peninsula)に生息するペンギン3種のうちの2種にとって、温暖化の進行はもはや恩恵をもたらすものではなくなっている」と付け加えた。

「今回の場合は温暖化だったが、単一の環境変動がどのようにして、時代を経るにつれて多種多様な結果をもたらし得るかを、今回の研究は極めて明白に示している」

(c)AFP