【6月11日 AFP】ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)前米国務長官が、待望の回顧録「Hard Choices(困難な選択)」の発売にあわせて出演したテレビ番組で、夫のビル・クリントン(Bill Clinton)元大統領の任期終了後、ホワイトハウスを離れたときに「わが家は無一文だった」と発言したことについて弁解した。

 新刊発売に先立ち9日に放送された米ABCテレビの特集番組でヒラリー氏は、ホワイトハウスを離れたときのクリントン一家は「無一文どころか借金まで抱えていた」「わが家にはお金がまったくなかった。住宅ローンやチェルシーの教育費のためにやりくりするのに大変だった」などと述べた。だが、この発言が、エリート意識を露呈するもので一般的な米国人の窮状に対して無神経だとの批判を浴びた。

 批判に対しヒラリー氏は翌朝、同局の別の番組で「今日の米国民の暮らしがどんなに大変か、私もよく理解しているつもりだ。わが家も人生でいろいろ陥る事態に一生懸命、立ち向かってきた。そしてこの14年間は恵まれている」と弁解した。

 ただしヒラリー氏は、ホワイトハウスで8年間過ごした後、クリントン家には1200万ドル(約12億円)の借金があったことを強調した。またその大半が、ホワイトハウス元実習生のモニカ・ルインスキー(Monica Lewinsky)さんとの不倫スキャンダルで、夫のクリントン元大統領が弾劾裁判にかけられた際の弁護費用だったことを明かし「私にとっては、それがホワイトハウスを離れたときのわが家の現実だった。私たちはとにかく働きづめなくてはならなかった」と述べた。

 クリントン元大統領は退任後に書いた回顧録がベストセラーとなり、執筆料を前払いで受け取った他、講演料で多額を稼いだ。一方、ヒラリー氏は03年に出版した回顧録「リビング・ヒストリー ヒラリー・ロダム・クリントン自伝(Living History)」で800万ドル(約8億2000万円)を、今回の回顧録ではさらに多額を前払いで受け取ったとされる。またヒラリー氏の講演料は1回20万ドル(約2000万円)とされている。

 新刊の発売初日の10日、ツアーの幕開けとなったニューヨーク(New York)の書店でのサイン会には「ヒラリー最高」と書かれたTシャツなどを着たファン数百人が午前5時から列を作った。今後数週間にわたり全米でさまざまなイベントが予定されており、2016年米大統領選に向けた非公式な選挙運動の開始だとする受け止め方も多い。(c)AFP