【6月10日 AFP】アイルランドで、カトリック教会が運営する未婚の母親向け施設で暮らしていた子どもたちが、試験用ワクチンの実験台とされていた疑惑が浮上したことにより、同教会が運営していた施設に関する論争が再燃している。

 同国のラジオ局ニューストーク(Newstalk)は、1970年代半ばに薬剤の治験対象として利用されていた子どもたち80人が、誤ってウシ用のワクチンを投与されたために健康を害していたと報じた。

 先日には同国西部ゴールウェー(Galway)州チュアム(Tuam)にあった施設の近くで、乳幼児800人ほどの遺体がひつぎにも入れられず墓標もないまま集団埋葬されていたことを示す証拠が見つかったばかり。

「マザー・アンド・ベビー・ホーム」と呼ばれるこうした施設には、婚外子を妊娠したことにより当時の保守的なカトリック社会から排斥された女性たちが暮らしていた。

 こうした施設で数千人ともされる子どもたちに試験用ワクチンが投与されていたことは、以前から知られていたが、当事者らは試験に関する情報を得ることが困難な状況に置かれてきた。ワクチンを投与された子どもたちの多くは、数十年後にようやくその事実を知った。

 チュアムでの集団墓地発見を受け、他の施設でも同様の墓地があるのではないかとの懸念が持ち上がっており、アイルランド政府は全施設を対象とした予備調査を命令。今後、大規模な調査の必要性の有無を調べる予定で、キャスリーン・リンチ(Kathleen Lynch)副保健相は、試験用ワクチン投与の件も調査の一環に含まれると言明している。(c)AFP