【6月10日 AFP】ソビエト帝国復活の野望に「固執」したウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)露大統領、「取り澄ました」胡錦濤(Hu Jintao)中国国家主席、「好戦的なクジャク」のようなマフムード・アフマディネジャド(Mahmoud Ahmadinejad)前イラン大統領――10日に発売された回想録の中で、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)前米国務長官は、世界の首脳たちをこんな風に形容している。

 635ページに及ぶ回想録「Hard Choices(困難な選択)」の発売は入念に管理されており、観測筋の多くはこれを2016年米大統領選に向けた非公式な選挙運動の開始と受け取っている。

 国務長官として4年間に112か国を訪問したクリントン氏は、解決困難な世界の諸問題の核心にいる重鎮らと交渉する際の対処法を同書の中で明かしている。そうした場ではしばしば相手との人間関係が交渉を方向付けたといい、「良くも悪くも外交の場では、多くの人が思っているよりも個人的な要素がものを言う」とクリントン氏は記している。

 米外交官のトップとして対峙(たいじ)した中で最も手強かった相手は、オバマ政権発足時に2国関係の「リセット」に失敗して以降、険しい関係にあったロシアのプーチン大統領だという。プーチン氏は「いつでも人を試し、境界線を押し広げて来る」といい、「権力、領土、影響力の拡大への欲求」を持った独裁的な指導者だと描写している。

 クリントン氏は今年ロシアがウクライナのクリミア(Crimea)半島を併合し、同国東部に介入していることも批判し、そうした動きは経済の失速を抱えている国にとって裏目に出ると警告している。また「プーチン氏がソビエト帝国の復活と国内の反対意見の弾圧に固執していなければ、ロシアは長期的な戦略上の権益を追求することができるとも思う」と述べている。

 一方、中国の胡国家主席については、プーチン氏に比べて闘争的な態度を直接表さず、もっと「筋書きに沿って」「上品」に見えるが、故鄧小平(Deng Xiaoping)氏のような「個人としての威厳」が欠如していると強調。「私には胡氏は、実務に関わる最高経営責任者(CEO)というよりも、取り澄ました取締役会の会長のように見える」と述べ、訪中した際には、胡主席よりも下位の高官との方が実のある協議ができたと回想している。

 また、イランのアフマディネジャド大統領(当時)については「ホロコースト(ナチス・ドイツによるユダヤ人大虐殺)否定論者で、ことあるごとに欧米を侮辱する扇動者」だと強烈に批判。「自分を誇示しながら国際舞台を歩く好戦的なクジャク」で、問題となっているイランの核開発計画について有意義な交渉を行うために必要な米国との緊張緩和に十分取り組む意志がないと責めている。

 米国の同盟国の首脳では、クリントン氏から見てアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)独首相ほど影響力の強い人物はほとんどいないようで、「欧州で最も力強い指導者」と呼んでいる。(c)AFP/Michael Mathes