【6月6日 AFP】エジプトで5日、セクシュアルハラスメント(セクハラ)に対し最大5年の禁錮刑を科す新法が承認された。同国では2011年の「アラブの春」以降、性的な嫌がらせや女性を標的とする暴力事件が急増しているが、これまでセクハラ行為を取り締まる法律がなく対策を求める声が高まっていた。

 国連(UN)が2013年に行った調査によると、エジプトでは女性の99%以上が何らかの形で性的嫌がらせを経験している。

 こうした中、既に退任が決まっているアドリ・マンスール(Adly Mansour)暫定大統領は、女性に対するセクハラを不法行為とみなし禁錮刑か罰金刑、またはその双方を科す法改正を承認した。

 言葉やジェスチャー、行動で性的・ポルノ的な内容を想起させた場合は、禁錮6月以上か罰金3000~5000エジプトポンド(約4万3000~7万2000円)の量刑の対象となる。

 セクハラ行為が「被害者に対して性別による優位性を確保する目的」で行われた場合は、禁錮1年以上と罰金1万~2万エジプトポンド(約14万3000~28万7000円)の両方が科せられる。

 さらに職業、家庭、教育の場における地位や環境的な圧力を利用したセクハラに対しては、禁錮2~5年と罰金2万~5万エジプトポンド(約28万7000~71万6000円)の刑が適用される。

 だが、セクハラ対策を訴えてきた人権活動家たちは、罰則の効果を疑問視している。

 セクハラ撲滅運動「I Saw Harassment」を立ち上げたファティ・ファリド(Fathi Farid)氏は、罰金刑か禁錮刑かの決定権は裁判官にあるため厳罰には「意味がない」と一蹴。「集団による性的暴力を取り締まるには不十分だ」と指摘した。

 エジプトでは2011年の民衆蜂起でホスニ・ムバラク(Hosni Mubarak)元大統領の政権が崩壊して以来、セクハラや女性を標的とした暴力事件が急増し、デモに参加した女性がデモ隊の中で若者集団に襲われる事件も起きている。(c)AFP