【6月5日 AFP】中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory SyndromeMERS)を引き起こすウイルスがラクダからヒトに感染したことを示す直接的な証拠を初めて確認したとの研究報告が、4日の米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に掲載された。

 MERS被害が最も大きいのはサウジアラビアで、同国保健省の統計によるとこれまでに688人が感染し、そのうち282人が死亡している。

 発表された研究は、2013年11月にMERSで死亡した44歳の男性の事例に基づいている。友人によると、男性はMERSを発症する7日前に病気のラクダ1頭の鼻を局所薬剤で治療していたという。男性はラクダ9頭を飼育していたとされ、うち4頭に鼻汁が出る症状がみられていた。

 研究チームは、ラクダ1頭から見つかったウイルスと、死亡した男性から検出したウイルスのゲノムを解析し、双方が一致していることを確認した。

「このデータは、ヒトの中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)感染が、(同ウイルスに)感染したラクダとの接触により引き起こされていたことを示している」と、サウジアラビアのアブドルアジズ国王大学(King Abdulaziz University)医学部のタリク・マダニ(Tariq Madani)氏率いる研究チームは述べた。

 同ウイルスについては、約20年前からラクダの間で一般的にみられるものだったことや、最近になってヒトに感染するようになった可能性が高いことが、これまでの調査で分かっている。(c)AFP