【6月4日 AFP】女性名がつけられたハリケーンは、男性名のハリケーンに比べ、人々が脅威を感じにくいため、死者の数が3倍になっているとする研究が、2日に米科学誌「米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)」で発表された。

 ハリケーン名は強度とは関係なく、あらかじめ男女の人名を用意し、それを交互に付けている。性差に関する偏見を避けるために科学者たちが1970年代に採用した方法だ。しかし、大西洋で過去60年余りに発生したハリケーンを対象とした研究の結果、ハリケーンの名前が深刻な結果を招いていることが明らかになった。

 米イリノイ大学(University of Illinois)の研究チームは、1950~2012年の間に米国に上陸した全ハリケーンの死亡者数データを分析した。すると「比較的男性的な名前が付いたハリケーンでは死者数(の平均)が15.15人だったのに対し、比較的女性的な名前のハリケーンの死者は41.84人と算出された」という。「言い換えれば、われわれのモデルによると、強力なハリケーンの名を『チャーリー』(男性名)から『エロイーズ』(女性名)に変えると死者数が3倍近くなるということだ」と論文は述べている。

 なおこの研究では、死者数が桁違いに多かった女性名のハリケーン「オードリー(Audrey)」(1957年)と「カトリーナ(Katrina)」(2005年)は結果にひずみが生じる可能性があるとして、分析対象から排除されている。

 論文の共著者シャロン・シャビット(Sharon Shavitt)教授は「嵐の強度から判断するに、人々は男女の振る舞い方に対するイメージを当てはめてしまっているようだ」「それによって女性名のハリケーン、特にベルやシンディーといった非常に女性的な名前のハリケーンは、より弱く凶暴性が低いように思われている」と指摘した。

 また研究チームが行った聞き取り調査で、回答者に「アレキサンドラ」「クリスティーナ」「ビクトリア」という女性名のハリケーンの威力を想像してもらったところ、対をなす男性名の「アレクサンダー」「クリストファー」「ビクター」と比べて危険性が低く、威力が弱いと評価する傾向があった。

 1970年代に男女の人名を交互に付ける方式を採用する前は、ハリケーンは女性のように予想困難だとの理由で女性名だけが付けられていた。科学者たちは、今回の結果はハリケーンの命名法を再度改定すべき時だということを示唆するものだと述べている。論文では「政策立案者にとって今回の発見は、ハリケーンのリスク評価における先入観の影響を抑え、最善の備えをうながす新しい命名法を一考する価値を示している」と結論付けている。(c)AFP