【6月4日 AFP】かつては治療不能とされたメラノーマ(悪性黒色腫)などのがんの治療法として、免疫療法がこのところ飛躍的な発展を見せている。ただ、患者によって治療効果に違いがある理由はまだわかっていない。

 米科学誌サイエンス(Science)は、腫瘍を攻撃するよう免疫機能を導くこの技術を2013年の最も重要な研究成果に選んだ。

 免疫療法では、腫瘍の防御を解除させる方法や、患者の最も強力な免疫細胞を選び出し、研究室で増殖させ、がんへの攻撃を強化するために患者の体内に再注入するといった方法が用いられる。

 南カリフォルニア大学(University of Southern California)ケック医学部(Keck School of Medicine)のスティーブン・オデイ(Steven O'Day)准教授は「免疫療法の長所は、より選別的で、持続性があり長期間にわたる寛解を生み出す」と語っている。

 昨年発表された研究によれば、免疫療法を施した進行メラノーマ患者の40%は7年たった後も、がんの兆候は見られないという。

 米シカゴ(Chicago)で開かれた米国臨床腫瘍学会(American Society of Clinical OncologyASCO)で2日発表された3つの臨床試験結果も、この数字の正しさを後押しするものといえるかもしれない。そのうち1つは、ある治療不可能なメラノーマ患者の初期段階の臨床試験で、平均的には1年以内とされる生存期間が、それまで前例がない3年半に延びたという。

 オデイ准教授は「これは本当に革命的なことで、メラノーマの治療法として成果をあげており、非常に難しい腫瘍の治療に初めて重要な進展がみられた」と述べている。

 一方、米国立衛生研究所(National Institutes of HealthNIH)の研究者らは2日、がん患者から免疫細胞を採取し、体外で数十億まで培養した後、再び患者の体内に戻す新しい療法が、9人の患者のうち2人で成功したと発表した。

 2人はともに30代後半の女性で、臨床試験前には、がんは全身におよんでおり余命1年以下とされていた。しかし、1人は治療後22か月、もう1人は1年以上経過したが、がんの兆候はみられないという。

 しかし、なぜ他の患者に効果がなかったのかという疑問は解明されておらず、科学者たちはこの問題に懸命に取り組んでいる。(c)AFP