乳がん遺伝子持つ喫煙者、肺がんリスクも約2倍に 英研究
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【6月2日 AFP】乳がんリスクを高めることが知られている遺伝子「BRCA2」の異常が、喫煙者の肺がん発症リスクを2倍近く高めるとした研究論文が、1日の米科学誌ネイチャー・ジェネティクス(Nature Genetics)で発表された。
論文を発表した英がん研究所(Institute of Cancer Research、ICR)などの研究チームは、今後、リスク要因を持つ人の治療とスクリーニング検査への道を開く可能性があるとしながら、「われわれの研究は、肺がんに対する遺伝的感受性の継承に関するさらなる証拠を提供する」と述べている。
ICRのポール・ワークマン(Paul Workman)副所長は「喫煙者は皆、保有する遺伝的特性に関係なく、自身の健康に関して相当なリスクを負っているが、この遺伝子異常を持つ人はさらに不利な状況に置かれている」と付け加えた。
4件の研究論文をメタ分析した結果、生涯に肺がんを発症する割合は、喫煙者人口全体では13%であるのに対し、BRCA2という遺伝子に特定の異常が存在する喫煙者では全体の約25%に達することが分かった。
分析では、肺がん患者1万1348人のDNAを、患者でない1万5861人のDNAと比較した。
ICRは声明を発表し、「乳がん、卵巣がんなどのがんリスクを高めることが知られているBRCA2の遺伝子異常と肺がんとの関連性は、肺がんの最も多くみられる亜型の扁平上皮がんの患者で特に強い」と述べている。
肺がんリスクについては、別の遺伝子との関連性が以前より指摘されていたが、BRCA2に関してはこれまで知られていなかった。
全人口の約2%が保有するこの異常変異だが、「肺がんとの遺伝的な関連性については、これまで報告されている中で最も強い」と論文の執筆者らは指摘している。
今回の研究についてICRは、「将来、扁平上皮肺がん患者は、BRCA変異を持つがんに有効性を示すように特別に設計された薬剤から恩恵を受ける可能性があることを示唆している」と述べ、「PARP阻害剤と呼ばれる薬剤群は、肺がんに対しての有効性が明らかになっていないが、BRCA変異を持つ乳がんと卵巣がんの患者の臨床試験で成果がみられている」と続けた。