【6月2日 AFP】米政府がアフガニスタンの旧支配勢力タリバン(Taliban)に拘束されていた米兵の解放と引き換えに、タリバンの捕虜5人の移送に応じたことについて、一部の共和党議員からは批判の声が上がっている。一方、チャック・ヘーゲル(Chuck Hagel)米国防長官は1日、作戦の目的は米兵の生命を救うことにあったと説明し、この「捕虜交換」を擁護した。

 米軍のボウ・バーグダール(Bowe Bergdahl)軍曹(28)は、2001年に米軍がアフガニスタンでタリバンとの戦闘を開始して以降、タリバンにとらわれたままだった最後の米兵だったが、前月末、キューバにあるグアンタナモ(Guantanamo)米海軍基地で拘束されていたタリバン幹部5人と引き換えに5年ぶりに解放された。

 カタールの仲介で実現した劇的な身柄交換については、米・タリバン双方が成功だったと宣言している。タリバンの最高指導者、ムハマド・オマル(Mohammad Omar)師は、グアンタナモに拘束されていた5人の解放を「大きな勝利」と称える極めて異例の声明を発表。ヘーゲル長官は、アフガニスタン和平に向けた突破口となり得るとも示唆しており、米国とタリバン間の信頼醸成につながる可能性を指摘する声もある。

 だが、数人の共和党議員は、さらなる米兵の拉致を助長するものとしてこの捕虜交換を批判。共和党のジョン・マケイン(John McCain)上院議員は、移送したタリバン幹部たちが再び米国との戦闘に復帰することを防ぐためにどのような手段が講じられているのかを明らかにするよう要求した。

 一方、バーグダール軍曹の解放に従事したチームをねぎらうためアフガニスタンの首都カブール(Kabul)北方にあるバグラム(Bagram)空軍基地を電撃訪問したヘーゲル長官は、同基地に向かう途上で、解放作戦についての新たな詳細を報道陣に説明した。

 国防総省が公開した資料によると、同長官は「われわれや情報機関が把握した情報から、バーグダール軍曹の安全と健康の双方が危機的な状態にあり、特に健康状態が非常に悪化していたことが分かった」「もし機会があるならば迅速に行動し、軍曹を救出する必要があると判断した。彼の生命を救うためだ」などと語り、捕虜交換作戦を擁護した。(c)AFP/Mushtaq MOJADDIDI