【5月31日 AFP】米国のチャック・ヘーゲル(Chuck Hagel)国防長官は31日、シンガポールで開かれているアジア安全保障会議(シャングリラ会合)で講演し、南シナ海(South China Sea)で「安定を損なう行動」を取らないよう中国に警告した。

 ヘーゲル氏は米国はアジアの同盟国・友好国への関与を続けると強調。海の領有権争いの平和的な解決を呼び掛け、「中国はここ数か月、南シナ海での主張を通すために安定を損なう、一方的な行動を取っている」と述べ、アジア安全保障会議に国の代表として軍の高官を送り込んいる中国に遠慮のないメッセージを送った。

 ヘーゲル氏は、米国はいずれかの国に肩入れをすることはないが、「ある国が自らの主張を押し通すために、威嚇、強制、軍事的圧力を使うことには断固として反対する」と述べた。

 中国はヘーゲル氏の講演に強く反発。中国中央テレビ(China Central TelevisionCCTV)の記者は、中国人民解放軍の王冠中(Wang Guanzhong )副総参謀長が「この講演は覇権、扇動、脅迫、威嚇に満ちている」と述べたと伝えた。王冠中氏も翌6月1日に講演を行う予定になっている。

 中国に対して厳しい言葉を使った一方、ヘーゲル氏は軍事協力や多国間演習など米中間の「新しい関係のモデル」構築に向けた努力を引き合いに出し、「米国は中国に手を差し伸べている。われわれはこの地域の全ての国に繁栄と安全を広げようとしているからだ」と述べた。

 このほかヘーゲル氏は講演の中で、尖閣諸島(Senkaku Islands)は日米安保条約の適用対象であるという米政府の従来の見解を改めて示すとともに、アジアの安全保障でより大きな役割を果たすという日本の計画を支持した。安倍晋三(Shinzo Abe)首相は30日にアジア安全保障会議で講演し、フィリピンやベトナムへの巡視船提供など、アジアの安全保障でより「積極的」な役割を果たしたいと述べていた。フィリピンへの巡視船提供は決定しているが、ベトナム向けはまだ決まっていない。

 ヘーゲル氏はミャンマーなど民主化を進めている国を支援することも表明した。今月22日にクーデターが起きたタイには、拘束している人物の解放、表現の自由の制限撤廃、選挙の実施を要求し、これらが実現するまで米国防総省はタイへの軍事援助とタイとの協力関係の停止を継続し、それらのあり方を見直すと述べた。(c)AFP/Martin ABBUGAO