電子たばこ規制の再考をWHOに要望、専門家グループ
このニュースをシェア
【5月30日 AFP】世界禁煙デー(World No Tobacco Day)の31日を前に、電子たばこに注目が集まっている。従来のたばこに取って代わる「救命士」として電子たばこの価値を認めるよう、医師や健康政策の専門家グループが世界保健機関(World Health Organisation、WHO)に書簡で訴え出たのだ。
50人を超える専門家のグループは、WHOのマーガレット・チャン(Margaret Chan)事務局長に宛てた書簡の中で「たばこの煙で6秒ごとに1人の命が奪われているなか、タールを含まない電子たばこは、従来のたばこが含有する有害物質に起因するがんや脳卒中、心臓、肺疾患などの予防に役立つ従来たばこの代替品」との見解を示した。
また、「電子たばこは21世紀で最も意義ある健康分野の技術革新となりうるもので、数億人の命を救うだろう」と訴え、国際レベル、国レベルの双方で電子たばこ促進の「勇気ある主導」をWHOに求めた。現状では電子たばこ使用の長期的な健康への影響はまだ不透明であることから、ブラジルやシンガポールのように電子たばこの使用を禁止したり、より厳しい規制を取り入れたりする国も出ている。
そうしたなかで専門家グループは、ニコチンを煙ではなく蒸気の状態で放出し、有害物質の含有量も少ない電子たばこにも、一括して従来のたばこと同じ規制を課そうとするWHOの動きに、懸念を示している。
規制が電子たばこにも適用されれば、WHO加盟国は電子たばこの広告や公共の場での使用を禁止し、税金を課さねばならない。
AFPが入手した書簡の写しによると、書簡には「電子たばこのような、たばこ害の減少につながる製品への乗り換えという選択を阻害することは、非倫理的であり有害だ」と書かれている。
その一方でWHOは、10月に開催される加盟国会合での発表をめどに、電子たばこ規制に関する勧告の作成に取りかかっている。背景には、電子たばこの長期使用の安全性や禁煙効果についての科学的な根拠が、まだ示されていないという事情がある。
電子たばこについては、無制限に広告が流れて喫煙習慣が美化され、通常のたばこを吸わない未成年者がニコチンの誘惑にとりつかれかねないとの懸念も聞かれる。
■ニコチンは癖になり、タールが命を奪う
2003年に中国で発明された電子たばこは、欧州だけで700万人が使用していると推定されている。
WHO宛ての書簡に署名した一人で依存症が専門の英ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(University College London、UCL)のジェリー・スティムソン(Gerry Stimson)名誉教授はAFPの取材に、従来のたばこと比較すれば、電子たばこに含まれる有害物質は「ごく微少に過ぎない」と述べた。
教授は「人々はニコチンを求めてたばこを吸い、タールのために死んでいる」と指摘。「もし、たばこの葉を燃やさずにニコチンを取り出すことが可能になれば、ニコチンを摂取しても、たばこを吸って死ぬことはなくなるだろう」との見解を語った。
スティムソン教授はまた、もしWHOが電子たばこを従来のたばこ製品の1つに分類するならば、それは、たばことして分類することで電子たばこを使いづらくし、魅力を失わせたいとの意図がWHOにあるのではないかと述べた。(c)AFP/Mariette LE ROUX