【5月29日 AFP】人種差別が根強かった米国南部での過酷な少女時代を描いた自伝で知られるアフリカ系米国人女性作家で公民権運動家のマヤ・アンジェロウ(Maya Angelou)さんが28日、死去した。86歳だった。

 アンジェロウさんは、アフリカ系米国人女性によるノンフィクション作品として初のベストセラーとなった自伝「歌え、翔べない鳥たちよ(I Know Why the Caged Bird Sings)」で最も良く知られている。

 暗殺された米公民権運動指導者のマーティン・ルーサー・キング(Martin Luther King Jr. )牧師とも親しかったアンジェロウさんは、黒人と女性の声を代表する人物として、国内外で広く尊敬を集めていた。

 バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は追悼の言葉として、「われわれの時代の最も明るい光の一つであり、素晴らしい作家、情熱的な友人、そして真に卓越した女性だった」と語った。

 1993年の就任式にアンジェロウさんを招き、詩を朗読してもらったビル・クリントン(Bill Clinton)元大統領は、米国は「国宝を失った」と述べた。

 本名をマーガリート・アニー・ジョンソン(Marguerite Annie Johnson)というアンジェロウさんは、1928年4月4日、ミズーリ(Missouri)州セントルイス(Saint Louis)で生まれた。両親の離婚、人種差別、そして7、8歳の時に母親の交際相手から性的暴行を受けるなど、壮絶な幼少期を過ごした。

 性的暴行とその余波(暴行犯は後に殺害された)による心の傷のため、アンジェロウさんは以後6年間にわたり言葉を発することをやめ、その間に執筆活動を始めた。

 第2次世界大戦中、ダンスと演技を学ぶためにカリフォルニア(California)州サンフランシスコ(San Francisco)に移り住んだ。そこで、自分と赤ん坊の息子の生活を支えるため、黒人女性初のケーブルカー車掌など、さまざまな職に就いた。

 50年代には、オフ・ブロードウェーなどの舞台に立つと同時に、黎明期の公民権運動に参加するようになり、多くの中心的人物と知り合うようになった。

 オバマ大統領は2011年、文民最高位の大統領自由勲章(Presidential Medal of Freedom)をアンジェロウさんに授けている。(c)AFP/Robert MACPHERSON