【5月28日 AFP】スーダンで、背教行為を理由に死刑判決を受けたキリスト教徒の女性が、拘置所内で出産した。女性の夫が27日明らかにした。この判決をめぐっては、国際社会から非難が集まっている。

 今月15日に首都ハルツーム(Khartoum)の裁判所で、妊娠8か月で死刑を言い渡されたメリアム・ヤヒア・イブラヒム・イシャグ(Meriam Yahia Ibrahim Ishag)さん(26)は、ハルツーム近郊のオムドゥルマン(Omdurman)市にある女子刑務所で勾留されており、イシャグさんはそこで女児を出産した。人権活動家らによると、イシャグさんには1歳8か月の息子もおり、その男児もイシャグさんと一緒に収容されているという。

 すでにイシャグさんの上訴手続きを済ませていることを明かしている夫のダニエル・ワニ(Daniel Wani)さんは拘置所の事務所でAFPの取材に対し、「これまでのところ面会できていない。中に入って会うことを許してもらえなかった」として、「本当に失望している」と語った。ワニさんは、まだ名付けも終わっていないという娘と妻に会えるよう、引き続き交渉を行っている。

 父親がイスラム教徒のイシャグさんは、同国で1983 年に施行された、改宗者は死刑に処すと定めたイスラム法(シャリア)に基づいて有罪が言い渡された。しかし英ロンドン(London)に拠点を置く国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(Amnesty International)によると、イシャグさんの母親は正教会のキリスト教徒で、イスラム教徒の父が不在だったことからイシャグさんは母と同じ正教徒として育てられたという。イシャグさんは判決に先立ち、「私はキリスト教徒です、背教行為を犯したことはありません」と話していた。

 国連(UN)の人権専門家らはこの判決を「言語道断」だとみなし、無効にされるべきだという見方を示した上で、「信仰する宗教を選んだり改めたりすることは犯罪でも何でもない。むしろ基本的人権の一つだ」と訴えている。

 英国に拠点を置き信教の自由を訴える「世界キリスト教連帯(Christian Solidarity Worldwide)」によると、イシャグさんの死刑が執行されれば、1991年施行の刑法に基づく背教罪での最初の処刑となるとしている。ただし識者らは、出産後2年は育児期間として死刑執行は猶予されるはずだと指摘している。(c)AFP/Ian Timberlake