両乳房切除、非合理的に選択され過ぎている 米調査
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【5月23日 AFP】片方の乳房で乳がんと診断された女性は多くの場合、両方の乳房を切除すべきかどうかという難しい決断を迫られるが、両乳房切除が実際には不必要な人にまで選択されている可能性があるとの調査結果が、21日の米国医師会雑誌(内科学)「Journal of the American Medical Association Internal Medicine」に発表された。
両乳房切除は、生存率の上昇にはほとんどつながらず、一般的には乳がんリスクが高いと考えられる女性のうち約1割に勧められる。
高リスクとみなされるのは、BRCA1またはBRCA2という遺伝子に変異が認められた女性や、乳がんの強い家族歴がある女性で、その場合は片方に乳がんがあると診断された段階で再発防止のため両乳房の切除手術が提案される。
調査によると、片方の乳房で乳がんと診断され両乳房の切除手術を受けた女性の69%は、乳がんの強い家族歴や遺伝的な危険因子は認められなかったという。
調査結果をまとめた主執筆者、ミシガン大学医学大学院(University of Michigan Medical School)のサラ・ホーリー(Sarah Hawley)内科学助教授は、「女性は、がん再発の懸念から予防的対側乳房切除(Contralateral Prophylactic Mastectomy、CPM)を選ぶようだが、がんに侵されていない乳房を切除しても、がんのある方の乳房の再発リスクが下がるわけではない以上、これは合理的な選択ではない」と話している。
この調査は、片方の乳房でステージI~IIIのがんと診断された1447人の米国人女性を対象に行われた。平均年齢は59歳だった。このうち両乳房を切除したのは約8%で、35%はがんが見つかった乳房だけを切除していた。また、がんの部位だけを除去する乳房温存手術を選択した人は58%だった。
調査結果について米ボストン(Boston)にあるダナ・ファーバーがん研究所(Dana-Farber Cancer Institute)のショシャナ・ローゼンバーグ(Shoshana Rosenberg)氏とアン・パートリッジ(Ann Partridge)氏は、乳がんと診断された女性が直面する複雑な感情について指摘している。
「不安と恐怖にさいなまれて最善の決定がなされないことも確実にある」として、「CPMは臨床的適応がない、女性に対する過剰な治療とみなされるかもしれないが、一方で、一部の女性にとってはリスク軽減や審美的・心理的な観点からCPMこそ適切な選択となることもあり得る」として、「この問題をめぐるバランス」を見極めるため、医師と患者が意思決定のプロセスを共有すべきだと提言している。(c)AFP/Kerry SHERIDAN