【5月23日 AFP】オーストラリアの研究チームは、爆破で生じる音波でろうそくの火を吹き消すように、制御不能の山火事を爆発物で食い止めるという研究に取り組んでいる。

 豪ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)機械・製造工学部のグラハム・ドイグ(Graham Doig)氏の研究チームは、爆風がどのようにして火を消せるのかに関する研究を行ってきた。このような消火技術は、油田火災に対して用いられることがある。

 ドイグ氏は実験で、長さ4メートルの鋼鉄製の管の内部で爆発物を起爆させ、プロパンガスのバーナーで高さ1メートルに燃え上がっている炎をめがけて突進する衝撃波と気流を発生させた。

「衝撃波の前後での圧力の急変と、その後に来る気流の衝撃により、炎は燃料源から真っすぐに押しのけられた」とドイグ氏は説明する。「炎は燃料が得られなくなるとすぐに燃焼しなくなった」

 ドイグ氏によると、圧縮空気でも爆風を発生させることは可能だが、同氏の方法よりも難しいという。理由は、圧縮空気が大量に必要になるからだ。

「危険度が大幅に高いように思われるにもかかわらず、爆発物を使うことの利点は、本当に微量で済むことと、この種のニトログリセリンタイプの爆発物は自然発火しないことだ。爆発させるには、起爆電流を加える必要がある」

 ドイグ氏はこのアイデアについて、例えばヘリコプターで爆発物を火事の中に投下して、ゆくゆくはオーストラリアを含む世界各地で発生する大規模火災を食い止めるために利用されることを望んでいるという。

「爆発物がバーンと爆発して火が消え、皆が家に帰れる、という風にはおそらくならないだろう。これは、火事をコントロールするために適用しなければならなくなる数多くの道具の1つにすぎない」

 夏季にオーストラリアの人々を苦しめる森林火災の場合、この技術を「時間稼ぎ」のために導入して、危険な火災前線が迫っている地域から人々を避難させることができるかもしれない。

 ドイグ氏によると、今回の研究は、どのようなシナリオにおいて、これが選択肢の1つになり得ると思われるかを確かめるために、消防士との連携を検討し始めている段階にあるという。

「われわれの主張は、これがどんな状況にも対応できる特効薬ではなくて、一部のシナリオでは確かに適用可能かもしれないということだ。肝心な点は、非常に安全で制御された方法で行うことだ」とドイグ氏は述べている。(c)AFP