1988年に買った油彩画、ダリ初のシュルレアリスム作品と判明
このニュースをシェア
【5月23日 AFP】20年以上前にスペインの古物店から150ユーロ(約2万1000円)ほどで買い取られた油彩画がこのほど、巨匠サルバドール・ダリ(Salvador Dali)が10代の時に描いた初めてのシュルレアリスム作品と認定された。美術専門家らが22日、発表した。
「The intrauterine Birth of Salvador Dali」(サルバドール・ダリの胎内誕生)と呼ばれるこの作品には、火山上空を舞う天使が描かれており、ダリの署名も入っている。
この油彩画を同国北東部ジローナ(Girona)のアンティークショップで見出したのは、画家で美術史家のトメウ・ラモ(Tomeu L'Amo)さん。1988年のことで、2万5000ペセタ(当時のスペイン通貨単位)を支払って購入した。
ラモさんは、「色を見てダリではないかと思った。ただそれは私見にすぎず、証拠はなかった。調べ続けるうちに、徐々にダリの絵だという確信が強まった」と話している。とはいえ、当初は別人の作品だとして誰も認めてはくれなかった。署名の脇に、「1896」と記されていたからだ。これはダリが生まれる8年前に当たる。
しかし2004~13年にかけて、赤外線やX線、紫外線などを用いた最新技術による鑑定を行い、美術専門家らはこの作品が確かに、ダリが17歳だった1921年ごろに描かれた作品だと結論付けた。ダリ研究の第一人者でこの作品の鑑定作業を手掛けてきたニコラ・デシャルヌ(Nicolas Descharnes)氏によると、「この絵がダリの手による最初のシュルレアリスム作品と考えられる」という。
「1896」という年についてラモさんは、とっぴな主張をしたりメディアを騒がせたりすることで知られていたダリのことだから、数占いでもして思いついたのではないかと考えている。「これほど長い間人々をだますことに成功して、ダリはきっとお墓でほくそ笑んでいるはず」と語っている。
ラモさんは今月、この作品を匿名の収集家に売却したという。売却額は明らかにされていない。(c)AFP/Daniel SILVA