【5月22日 AFP】シリア中部、かつて反体制派が掌握し政府軍による包囲が長く続いていたホムス(Homs)の惨状を一人の女性が撮影し、それをシリアからフランスに亡命している監督が1本の作品にまとめた映画『Silvered Water, Syria Self-Portrait、(銀色の水、シリアの自画像の意)』が、第67回カンヌ国際映画祭(Cannes Film Festival)で上映された。

 映像を撮影したドキュメンタリー映像作家のウィアム・シマブ・ベディルハン(Wiam Simav Bedirxan)さんと、オサマ・モハメド(Ossama Mohammed)監督の2人は、同映画祭での本作上映数時間前に初対面を果たしたばかりだった。

 2011年に仏パリ(Paris)に亡命したが、それ以降は「運良く生き延びてしまった」との罪の意識にさいなまれていたシリア・ラタキア(Latakia)出身のモハメド監督と、いったんは逃げ出したホムスの家族の元にビデオカメラを携えて戻ったベディルハンさん。2人の出会いはお互いの人生にとってのターニングポイントとなった。

 過去にカンヌ映画祭に2度出品経験があるモハメド監督はAFPの取材に対し、ホムスのベディルハンさんからある日突然連絡があり、もし監督が自分の立場に置かれていたらどうするかと尋ねられたことを明らかにし、このベディルハン氏からの連絡によって「助けられた」と述べた。

「当時私は苦しんでいた。ダマスカス(Damascus)からパリにやってきて、助かったという感覚はあったかもしれない。だが私の心は助かってなどいなかった。本当に助けてくれたのはシマブだった」(モハメド監督)

 最初の連絡を受けてから数か月間、ベディルハンさんはインターネットを通じてモハメド監督に映像を送り続けた。監督はその映像と電子メールでやり取りする内容を基に、作品の制作に取り掛かった。