化学兵器対策にシロガラシ、使用の証拠や汚染除去に 研究
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【5月21日 AFP】マスタード(洋がらし)の原料などとして長らく親しまれてきたシロガラシ(学名:Sinapis alba)が、化学兵器対策に利用できる可能性があるとの研究が、21日の英学術専門誌「英国王立協会紀要(Proceedings of the Royal Society A)」に発表された。
研究所での実験で、シロガラシを猛毒の神経剤「VXガス」に汚染された土壌で育てたところ、VXガスは根から吸収されて45日間にわたってシロガラシに残留した。
研究チームは論文で「(シロガラシは)VXガスがかつて存在したことを分子的に証明するタイムカプセル」として利用することが可能だと述べている。
シロガラシは、VXガスだけでなくサリンガスも吸収した。サリンガスは昨年8月、シリア・ダマスカス(Damascus)郊外にある反体制派が掌握するグータ(Ghouta)で使用され、約1400人が死亡したとされる。
英国の研究チームは、化学兵器による攻撃で人体がさらされるガスの量よりもはるかに少ない250マイクログラムのVXガスに汚染された土壌でシロガラシの種子を栽培した。栽培されたシロガラシは期間をずらして収穫され、それぞれ分析にかけられた。
「この方法論を用いればVXガス使用の証拠が土壌分析で得られないときに証拠を得ることが可能だ」と、研究チームは結論づけた。
■汚染除去への応用も
また研究により、化学兵器が使用された土壌から汚染物質を除去するためにシロガラシが利用できる可能性も出てきた。シロガラシは乾燥や害虫、熱に強く、厳しい環境でもよく育つ植物だ。
「シリア国内で使われたサリンは環境汚染物質となって残った」と研究チームは述べ、シロガラシの栽培が汚染された土壌を回復させる1つの解決方法になるかもしれないと提言している。(c)AFP