【5月21日 AFP】タイ全土に戒厳令を発令した同国陸軍のプラユット・チャンオーチャー(Prayut Chan-O-Cha)司令官は20日、対立する政府支持派と反政府派の双方に対し対話を促した。

 プラユット司令官は記者会見で「われわれは現在、双方を対話に招いている段階にあるが、現状はまだ通常とは言えない。それが、私が戒厳令を発令しなければいけなかった理由だ」と説明した上で、政府支持派と反政府派の双方に衝突を避けるよう呼び掛けた。

 同国ではこれまでに未遂を含め20回近くのクーデターが起きているが、今回の軍介入の意図を問われたプラユット司令官は「結論を急がないように」と述べ、現状はまだクーデターには至っていないとの見解を示した。

 ニワットタムロン・ブンソンパイサーン(Niwattumrong Boonsongpaisan)暫定首相も記者団に対し、政府が求めているのは「わが国に平和と秩序がもたらされる」ことだとして、国に調和が戻るよう独自の訴えを行った上で、事態の収拾のため8月3日に新たな選挙を実施することを提案した。

 一方の反政府派は、街頭デモを続行する構えを表明。反政府デモの指導者ステープ・トゥアックスバン(Suthep Thaugsuban)元副首相は20日夜のデモ集会で「われわれは闘い続ける。まだ勝利はしていない」と宣言した。

 プラユット司令官は同日未明、反政府デモが7か月近く続くタイでの政治のまひ状態を打開するためとして、戒厳令を発令。首都バンコク(Bangkok)中心部の店舗や宿泊施設が立ち並ぶ地区には、銃を携行した兵士や軍の車両が展開された。部隊は全面的な検閲令の下で放送禁止となっているテレビ局各社にも配備されている。しかし市民の多くは、普段通りの生活を送っているとみられる。

 平時にはタイ王室の頑強な擁護者と認識されている軍指導部の介入が、混迷が長期化している政局の均衡にどのような影響を与えるのかは未知数だが、暫定政府の権限は残され、プラユット陸軍司令官自身は仲介者という立場を示している。(c)AFP