【5月21日 AFP】過去1世紀で最悪の洪水に見舞われているバルカン(Balkans)半島では20日、死者数が49人に達し、セルビアではこれまでの最高水位が記録された。被災各国の当局者らは、伝染病のまん延を危惧している。

 約百万人に飲料水が行き渡っていないボスニア・ヘルツェゴビナは国喪に入っており、約160万人に洪水被害が及んだセルビアでも21日からの国喪を宣言している。

 セルビアのアレクサンダル・ブチッチ(Aleksandar Vucic)首相は、気温上昇に伴って洪水の流れに交ざっている数千の動物の死骸の腐敗が進んでいることから、病気のまん延を警戒している。同首相が議会で述べたところによると、「処理を要する動物の死骸が何トンもある」という。

 またセルビアとボスニアでは、防護服を着用した医療関係者や軍の要員が、浸水した広大な農地の後片付け消毒に当たっている。これまでに数トンの動物の死骸が回収されているが、泥に覆われたり地滑りが起きたりしている地域では作業に遅れが出ている。

 世界保健機関(World Health OrganizationWHO)は20日、セルビア当局に対し、衛生措置と安全な飲料水の確保に関する助言を行うため、専門家を派遣したと発表した。またWHOは、下痢を引き起こす病気など、洪水被害の際に広がりやすい疾病の対策に必要となる医療材料の搬入作業も行っているとしている。

■欧州各国が支援を表明

 欧州委員会(European Commission)は20日、欧州連合(EU)加盟国のうち19か国が支援を申し出ていることを明らかにした。EU加盟各国からすでに400人近い救助隊員が被災地入りしているという。

 欧州委員会のクリスタリナ・ゲオルギエワ(Kristalina Georgieva)欧州委員(国際協力・人道援助・危機対応)はセルビアの首都ベオグラード(Belgrade)に入り、政府当局者と会談した。また北大西洋条約機構(NATO)のアナス・フォー・ラスムセン(Anders Fogh Rasmussen)事務総長も、21日にボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボ(Sarajevo)を訪問することになっている。(c)AFP/Aleksandra NIKSIC