【5月15日 AFP】熱帯低気圧の勢力が最も強くなる地点が、赤道から南極・北極の方向へ移動しているとの研究が、14日の英科学誌ネイチャー(Nature)に発表された。

 米海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric AdministrationNOAA)の1982~2012年のデータに基づきマサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of TechnologyMIT)などが行った共同研究によると、熱帯低気圧の勢力のピーク地点は過去30年間で、10年当たり緯度0.5度ずつ高くなっていた。距離に換算すると約56キロメートルずつ極方向に移動したことになる。

 移動幅が最も大きかったのは南北太平洋とインド洋だった。

 この結果が意味するのは、これまで台風やサイクロンの影響をあまり受けていなかった地域で今後、被害が大きくなる可能性があるということだ。

 一方で、赤道に近い地域では熱帯低気圧の直撃を受ける危険性が低くなるとみられるが、こうした地域では低気圧が降らす雨を水源としていることから、水不足が起きる恐れもある。

 熱帯低気圧のピーク地点が移動した過去30年間は、地球温暖化が加速し、熱帯域の幅が拡大した時期と重なっている。「熱帯域が拡大したことによって海水温が全体的に上昇し、その結果、熱帯低気圧が発生する地域も両極方向へ移動したのではないか」と、論文を共同執筆したMITのケリー・エマニュエル(Kerry Emmanuel)教授は述べている。(c)AFP