【5月14日 AFP】発展途上国の至る所で見られる2サイクルのスクーターは、局所的な大気汚染の大きな原因の1つになっていると指摘する研究論文が、13日の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に掲載された。

 論文を発表したスイスのポール・シェラー研究所(Paul Scherrer Institute)などの研究チームによると、ガソリンとオイルを混ぜた燃料で走る2サイクルスクーターは、消費される燃料を同等の割合で換算した場合、排出される微小粒子や有毒ガスの量は、大型トラックやバスの数十倍から数千倍に相当するという。

 タイ・バンコク(Bangkok)などの深刻な大気汚染に悩まされている都市では、このような「重大な大気汚染源」の大集団が、沿道排ガスの最大の単一排出源になっている可能性があると、研究チームは論文で述べている。

 論文は、「自動車やトラック、特にディーゼル車は、車両による大気汚染の主要な発生源と考えられているが、この考えは見直す必要がある。粒子状物質の濃度上昇は、2サイクルスクーターによる『不均一な汚染』の結果である可能性が、われわれの研究で示された」と指摘している。

 今回の研究でポール・シェラー研究所の大気化学者、アンドレ・プレボ(Andre Prevot)氏は、欧州での使用が認可されている2サイクルスクーターの排気物質を分析。その結果、アイドリング状態の2サイクルスクーターが排出する、スモッグの前駆物質である炭素ガスの混合物「揮発性有機化合物(VOC)」の量が別クラスの車両の平均124倍も多かったことが判明した。

 中でも発がん性のあるVOCの1つ、ベンゼンの濃度が驚異的に高いことをプレボ氏の研究チームは突き止めた。アイドリング中のスクーターの排ガスには、1立方メートルあたり最大で30万マイクログラム(146ppmに相当)のベンゼンが含まれていた。

 欧州連合(EU)は、ベンゼンに関する安全水準として、年間の許容量を1立方メートルあたり5マイクログラムと定めている。また米国の保健機関は、15分間で1ppmを超える濃度のベンゼンにさらされる場合、作業者は特殊な呼吸器具を着用するよう推奨している。