【5月19日 AFP】気候変動に起因する気象パターンの変動により、南極海(Southern Ocean)では過去1000年で最大級の強風が吹き、また南極での気温低下とオーストラリアでの干ばつも増加しているとの研究論文がこのほど、英科学誌「ネイチャー・クライメート・チェンジ(Nature Climate Change)」に掲載された。

「吠える40度(Roaring Forties)」との異名をとる南極海周辺の海域では、西風が非常に強く吹く。今回の研究を発表したオーストラリア国立大学(Australian National University)の研究者らによると、大気中の二酸化炭素濃度が上昇することでその風力はさらに増し、またルートも南極側に移動するという。

 研究を率いたネリリー・アブラム(Nerilie Abram)氏は、地球上で最大級の波がうねり、最強クラスの強風が吹くことで知られる南極海について、「風の威力は過去1000年で最も強まっている。風力の増大は過去70年でとりわけ顕著にみられ、我々の観測結果と気候モデルとを照らし合わせると、温室効果ガスの上昇との関連性があることは明白だ」と述べた。

 研究ではまた、他の大陸と同じような気温の上昇が南極でみられない理由についても明らかにされている。

 同氏によると、海域に吹く西風は、南極の東部地域までは達しないものの、循環して上空を覆う寒気を集め、オーストラリアにもたらすはずの雨を奪うと説明。「地球全体で温暖化が進行し、とりわけ北極地域では世界中で最も速いペースで気温の上昇が観測されているのにもかかわらず、南極で気温の上昇がみられないのはこうした理由からだ」と述べている。

 今回の研究では、南米で採取した樹木の年輪や湖沼のデータや、南極で採取した氷床コアを南半球一の性能を誇るANUのスーパーコンピュータ「ライジン(Raijin)」を使用して分析した。