西南極の氷床融解は制止不可能、NASA
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【5月13日 AFP】西南極を覆う氷床が「制止不可能」な速度で溶けていると警告する報告を、米航空宇宙局(NASA)ジェット推進研究所(Jet Propulsion Laboratory、JPL)の科学者が発表した。
今後数十年以内に、国連(UN)の「気候変動に関する政府間パネル(Intergovernmental Panel on Climate Change、IPCC)」の予測を超える海面上昇が起きるという。
NASAの氷河学者で、米カリフォルニア大学アーバイン校(University of California, Irvine)教授のエリック・リグノット(Eric Rignot)氏は「西南極氷床(West Antarctic Ice Sheet)の広大な部分が、不可逆的な後退状態に入っている。元に戻ることが可能な範囲をすでに越えてしまっている。氷床の後退は制止不可能だ」と語る。西南極の氷床の背後には、融解する氷床を支えることのできる巨大な陸地がないことが、調査で明らかになっているという。
科学者たちは何十年も前から、この西南極の「急所」について警告してきたが、詳細な情報を収集できるようになったのは1990年代以降のことだ。
米地球物理学連合(American Geophysical Union)の学会誌「地球物理学研究レター(Geophysical Research Letters)」に発表されたリグノット氏の論文は、西南極における近年の変化を衛星、航空機、船舶、地上から観測した結果、今後2世紀以内に地球全体で1.2メートルの海面上昇を招くだろうと指摘している。
また12日の米科学誌サイエンス(Science)に掲載されたコンピューターモデルによる研究結果も、西南極のスウェイツ氷河(Thwaites Glacier)が急速に融解しており、氷河が崩壊すれば、地球全体の海面は60センチ近く上昇すると述べている。論文の著者でワシントン大学(University of Washington)の氷河学者イアン・ジョーギン(Ian Joughin)氏は、この氷河の崩壊は避けられず、今後200~1000年の間に起きるだろうと述べている。(c)AFP/Kerry SHERIDAN