【5月13日 AFP】ナチス・ドイツ(Nazis)によるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)についての「回顧録」が世界的なベストセラーとなりながら、後に作り話だったと認めた女性作家に対し、米国の裁判所は、出版社に2250万ドル(約23億円)を返還するよう命じた。

 ベルギー生まれで米国在住のミーシャ・デフォンスカ(Misha Defonseca)氏が著した「少女ミーシャの旅―ホロコーストを逃れて3000マイル(Misha: A Memoire of the Holocaust Years)」は、ユダヤ人の少女が第2次世界大戦中にオオカミの群れに育てられナチス兵を殺害するという「実話」を描いたとされ、1997年の出版と同時にヨーロッパでベストセラーとなった。同書は20か国語に翻訳され、2007年には『ミーシャ/ホロコーストと白い狼(Surviving With Wolves)』のタイトルで映画化もされた。

 ところが、本名をモニク・ドワエル(Monique de Wael)というデフォンスカ氏は2008年2月、自分はユダヤ人ではなくカトリック教徒で、大戦中にベルギーの自宅を追い出されたこともなかったことなどを告白し、ストーリーのほとんどが作り話であると認めた。

 物語のねつ造が発覚する以前、デフォンスカ氏はゴーストライターのベラ・リー(Vera Lee)氏とともに出版社のマウントアイビープレス(Mt Ivy Press)を契約違反で訴えて勝訴。デフォンスカ氏は2250万ドル、リー氏も990万ドル(約10億1000万円)を得ていた。

 だがマサチューセッツ(Massachusetts)州の控訴審が4月29日に下し、今月12日に公開された判決文では、デフォンスカ氏に対し2250万ドル全額を出版社側に返還するよう命じられた。(c)AFP