【5月13日 AFP】中国の少数民族の祭りをめぐる3週間の旅の間、舞い踊る竜の行進に加わり、闘牛に歓声を上げ、村人たちと一緒に民謡を歌う──すっかり魅了された観光客はこれまで見てきた光景を挙げる。

 色鮮やかなミャオ族(Miao)の伝統行事を見物するために、中国北部からはるばる南西部の貴州(Guizhou)省に飛行機でやって来たという40代の男性ヘさんは、少数民族をめぐるツアーの功罪をまさに体現している。

「彼らの文化はちょっとだけ遅れているが、その後進性ゆえに、ここには質素な暮らしぶりがあるんだ」。そう話しつつ、ヘさんはミャオ族の慣習について熱弁をふるい、女性たちが身に着ける刺繍入りの伝統衣装と銀製の頭飾りに賛辞を送る。

■暮らしの変化の功と罪

 中国の国内観光旅行は、ヘさんのような人々の存在によってブームが過熱している。この観光ブームは、比較的貧しい暮らしを送る少数民族の居住地域に経済的な効果をもたらし、衰退する一方だった伝統文化をよみがえらせている一方で、商業主義をまん延させ、少数民族に対する固定観念を強化している。

 少数民族が暮らす地域に旅行客が押し寄せることで、その地域のありのままの姿が変質してしまったことを、ヘさんも認めている。「まだ早い時期に貴州省を訪れた私たちは、その質素さを見聞できたけれども、この伝統的な暮らしぶりが数年後にも存在しているかどうかは分からない」

 中国で最も貧しい州の一つである貴州省では、州人口の3分の1が、政府が規定する55の少数民族のいずれかに属している。

 ヘさんは、舟渓(Zhouxi)地区で開催されるミャオ族の大きな祭りを観光した。この祭りでミャオ族の女性たちは、結った髪にピンで花を留め、床まで届くリボンを腰につけて揺らし、男性たちはバグパイプのような竹笛を高らかに吹き鳴らす。

 そして、すぐそばの棚には、観光客の記念写真用の民族衣装が並べられている。

 裁縫の仕事で生計を立てるワン・アフアさん(39)は文字を書けないが、服の注文が増え、その値段も今や1万元(約16万4000円)を超えるようになったと喜んでいる。観光客に見下されたりすることはなく、「楽しんでくれているようだし、とても礼儀正しい。彼らが来てくれるのは良いことだ」と話す。