米国の一部レストランでチップ廃止の動き、従業員の賃金均等化も
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【5月7日 AFP】米国のレストランでは食事代の10~20%をチップとして払うことが慣例となっているが、一部でこの慣例を廃止する動きが出始めている──。
ウエーター、ウエートレスなど、ホールスタッフの賃金は非常に低く設定されている米国。国が定める連邦最低賃金は時給7.25ドル(約737円)だが、一部では合法的に時給2.13ドル(約216円)の低賃金労働がまかり通っている。物価が最も高い都市の1つ、ニューヨーク(New York)でもホールスタッフの時給は5ドル(約510円)~となっている。
そんなホールスタッフにとって、賃金を他のスタッフと同水準まで引き上げるための重要な収入源となっているがチップなのだ。しかし、一部のレストランではこの「チップ制」を廃止する動きが出始めている。ニューヨークで人気の居酒屋「りき(Riki)」もその中のひとつだ。店頭には「チップが要らない店です」、「チップは不要、求められません」との案内が掲げられている。
米コーネル大学ホテル経営学部(Cornell University's School of Hotel Administration)のマイケル・リン(Michael Lynn)教授によると、チップを取らない店には、いわゆる高級レストランが多いという。リン教授は、食事代にチップを含めることで、チップを少なく渡す客からホールスタッフを守ることができると説明する。また、ホールスタッフと、キッチンなど裏方で働くスタッフの賃金を均等化するという雇用者側の狙いがあると話した。
一方、チップを不要とした場合のマイナス面は、チップ代が含まれることから値段設定が高くなることだ。リン教授は「米国人はチップを食事代と考えていないことが多い。その店の価格設定が高いかどうかを判断する際にチップを考慮に入れない」と説明した。
ロサンゼルス(Los Angeles)市郊外グレンデール(Glendale)にあるレストラン「Brand 158」のオーナー、ガブリエル・フレム(Gabriel Frem)さんも、チップを取らないやり方で、客の気まぐれから従業員を守ることができると考える一人だ。AFPの取材で同氏は、「気まぐれな理由に基づいた客の思い付きの計算で従業員の賃金が左右されるのはごめんだ」とコメントしている。
チップを必要としないレストランが一般的になるにはまだまだ時間がかかりそうだが、こうした発想に共感する人も少なくない。
週に最低2回は外食するというニューヨーク在住のノエル・ウォーレン(Noel Warren)さんも、以前はホールスタッフの失礼な態度にはチップを減らすことで対応する考えを持っていたという。「そもそも、なぜ好ましくない接客態度をとるのかを考えた。おそらく、客がチップを弾んでくれるという期待感が持てないからだろう。しかし働きぶりへの適切な対価を得ることができれば、接客態度も改善すると思う」と自らの考えを述べた。(c)AFP/Juliette Michel