【5月6日 AFP】インド・ムンバイ(Mumbai)に住んでいた17歳のダバル・ロダヤさんは、3月20日に起きた列車の脱線事故で死亡した。

 マハラシュトラ(Maharashtra)州の州都ムンバイでは、1日に平均10人が鉄道の事故で亡くなっており、2013年の死者数は3506人だった。

 金融の中心地ムンバイは、英国の植民地だった160年前に敷かれた鉄道網の周りに発達してきた。国営インド鉄道(Indian Railways)のムンバイの鉄道網の1日の利用者数は750万人。鉄道はムンバイのライフラインとなっているが、その一方、満員電車の中での心臓発作や、走行中の車両からの転落、線路を渡ろうとして列車にはねられるなどして多くの人が命を落としている。

 ロダヤさんの家族や友人に駆り立てられたムンバイ市民数百人が鉄道当局への怒りを示し周辺の駅に向けて行進した。ロダヤさんの父親はAFPに「家族の光をなくした。鉄道当局に状況改善を訴えた」と話した。

 事故の際、救急車が現場に到着するまで1時間以上かかった上、鉄道警察はロダヤさんを安全な場所へ保護しなかったと、ロダヤさんの父親は主張している。鉄道当局はロダヤさんの父親の主張に対し、交通渋滞で遅れが生じたと説明しただけだった。

 鉄道の安全性向上を訴える活動家のサミール・ジャベリさんは、20年前にムンバイで列車から落ちて両足を失った。ジャベリさんは、ムンバイの鉄道網の安全性が低い現状について、「鉄道当局は改修などのための資金が不足しているというかもしれないが、実際のところはムンバイはインド鉄道にとって金のなる木だ」と汚職と不適切な管理体制が主な原因だと主張している。

 インドでは道路や鉄道、電力供給などのインフラ整備は経済成長の刺激策のカギとみなされている。現在、投票が行われている総選挙でも、主要政党はいずれもインフラ整備に積極的な姿勢を示している。だが、政治的な複雑さや制約により、複数の事業が何年も遅れており、混雑の解消にはほど遠いのが現状だ。

 またムンバイでは最近、国際空港の新ターミナル建設と、街の南北を結ぶ海上連絡道路という二つの大きな交通事業が実現したが、恩恵を受けるのはごく一部の富裕層だけだと批判の声が上がっている。(c)AFP/Aditya Phatak