【4月30日 AFP】インド人の自営業者、K・パドマラージャン(K. Padmarajan)さんは、自分のことを敗者だとは感じてない。むしろ、選挙に158回も立候補したことを祝うべきだと思っている――たとえ当選経験は一度もなくても。

 初めて立候補したのは1988年。タイヤ修理で生計を立てている自分の大志をあざ笑った人々と、インドの民主主義は欠点だらけで無能だとそしった皮肉屋たちに対して、パドマラージャンさんは、どうしても証明したいことがあった。AFPの取材に対し「当時、私は自転車のパンク修理店を経営していた。ある時ふと、ごく普通の収入で特別な社会的地位もない、ごく普通の私のような人間でも、選挙に立候補はできるという考えがひらめいた」という。

 結果は落選。その後も26年間、パドマラージャンさんは地方議員や国会議員に立候補し続けたが、落選に次ぐ落選。その間、アタル・ビハリ・バジパイ(Atal Bihari Vajpayee)氏やマンモハン・シン(Manmohan Singh)氏といった歴代首相のような著名候補に的を絞り、対抗馬として名乗りを上げてきた。

 これまでに納めた選挙供託金は計120万ルピー(約200万円)に上り、パドマラージャンさんの名前は、ギネス世界記録(Guinness World Records)のインド版「リムカ公式記録(Limca Book of Records)」にも載っている。

「選挙に勝とうと思って立候補したことは一度もないし、実は結果はどうでもいい」と話すパドマラージャンさん。「私はただ、人々に選挙プロセスへの参加と投票を強く促したいと思っている一人にすぎず、これが意識向上を促す私なりのやり方だ」

 世界最大と呼ばれるインドの総選挙。パドマラージャンさんは、同国西部グジャラート(Gujarat)州のバドダラ(Vadodara)選挙区で30日に立候補する。この選挙区は、今回の選挙で10年ぶりの与党返り咲きを狙うインド人民党(Bharatiya Janata PartyBJP)の首相候補として有力なナレンドラ・モディ(Narendra Modi)氏の牙城だ。

 この選挙区を選んだ理由をパドマラージャンさんに電話で尋ねると、「これまで必ず話題の候補者の対立候補になるようにしてきた。現在ニュースの見出しを独占している人物がいるとしたら、それはナレンドラ・モディに尽きる」と説明した。

 パドマラージャンさんはリムカ公式記録で「選挙に負け続けている存命の人物」という記録の保持者だが、過去にはさらに「上」がいた。1998年に亡くなったカカ・ジョギンダー・シン(Kaka Joginder Singh)さんは、300回以上という落選記録を持っている。

 パドマラージャンさんは「初めて立候補した時に私を笑った人たちが、今や私を支持してくれている。生きているうちに、できるだけ多く出馬したいと思っている」と改めて意欲を燃やしている。(c)AFP/Adam PLOWRIGHT