【4月28日 AFP】(内容一部更新)サウジアラビアでの中東呼吸器症候群(Middle East Respiratory SyndromeMERS)による死者数が27日、100人を超えた。同国関係当局は、ますます高まる国民の不安を取り除くための対応に追われている。

 呼吸器感染症のMERSによる今月の死者数は39人に上り、MERSコロナウイルスが初めて出現した2012年4月以降に確認された死者数102人の3分の1を大きく上回るほど急増している。

 サウジアラビア保健省は27日、生後9か月の乳児を含む8人がMERSにより新たに死亡したことを発表した。

 保健省によると、同国で初めて感染例が報告されて以来の患者数は339人に達しており、全世界で確認されている感染例の大半を占めているという。

 患者の中には、北西部の都市タブーク(Tabuk)にある病院関係者4人が含まれており、うち2人はエジプト人医師とシリア人医師で、2人はフィリピン人看護師だという。

 西部の港湾都市ジッダ(Jeddah)では、医療従事者からMERSウイルス感染者が出たことでパニックとなり、主要病院の緊急治療室が一時閉鎖された。

 ジッダにあるキング・ファハド病院(King Fahd Hospital)では今月、感染を恐れてMERS患者の治療を拒否した医師少なくとも4人が辞職している。

 いまのところ有効なワクチンはなく、専門家らはいまだにMERSの謎の解明に苦慮している。

 サウジアラビア政府は今月、保健相を突然解任した。解任の理由は明らかにされていない。臨時の後任に任命されたアーデル・ファキーフ(Adel Fakieh)労相は、MERSをめぐる「透明性」を約束した。

 同相は26日、ジッダ、首都リヤド(Riyadh)、東部州(Eastern Province)に専門医療センター3か所を開設したと発表した。

 世界保健機関(World Health OrganisationWHO)は、ここのところ、医療従事者の間で複数の感染例が発生していることから、MERSウイルスが動物宿主から直接ではなく、人間の患者から感染しているとの懸念が生じていることを指摘している。

 また最近の研究によると、MERSウイルスはラクダに「非常によくみられる」ウイルスで、少なくとも20年前からその存在が確認されており、ラクダから人間に直接感染する可能性もあるとされる。また同研究によると、ウイルスが変化し、人から人への感染が可能になった恐れがあるという。(c)AFP