【4月22日 AFP】自分の思考をわざわざ相手に伝えたくない──このような「煩わしさ」を一人の日本人科学者が解決してくれるかもしれない。

 まだ試作品の段階だが、喜びや怒り、退屈なふりさえも表現することができるメガネ型装置「エージェンシーグラス(AgencyGlass)」の開発に取り組んでいるのは、筑波大学(University of Tsukuba)の大澤博隆(Hirotaka Osawa)助教だ。

 エージェンシーグラスについて大澤助教は、「社会的な行動を代替できる装置を作りたかった」とコメントする。

 フレーム内の2つの小さなスクリーンに表示される眼球のイメージにより、使用者は感情をコントロールする必要性を軽減できる。これはロボットが人間の身体的な労働を軽減できるのと同じだという。

 人感センサーおよび外部カメラと接続された有機発光ダイオード(OLED)のスクリーンには眼球のイメージが表示され、使用者が全く別の方向を見ていたとしても、目の前にいる人はアイコンタクトが取れているように感じることができる。また「相手に注意を向けている」以外にも、それぞれの感情を事前に設定しておくことも可能だ。

 大澤助教は、使用に適した職種として、いら立ちを感じる乗客に対応しなければならない旅客機の客室乗務員や、内気な生徒に優しい印象を与えたい教師などを例に挙げた。

「発達したサービス業が増えてきて、物を運んだり、考えたりでなく、相手の気持ちを考えて振る舞うことが大切になっている。それは本心と違う行動を伴うことがある」(大澤助教)

 このような「感情労働」は、時として心の葛藤や情緒疾患をもたらすものとなる。大澤助教はエージェンシーグラスの技術が、こうした人たちをいつか助けることになるだろうと述べた。

 エージェンシーグラスは電池式で約1時間の連続使用が可能だ。重さはおよそ100グラムで、製作費用は約3万円だという。(c)AFP