【4月17日 AFP】中国人の男女の情交を描いた古代の絵画や、男性器をかたどった石製の遺物などを展示する展覧会が、16日から香港(Hong Kong)で開かれている。展示品はいずれもオランダ人の美術品収集家、フェルディナンド・ベルトレー(Ferdinand Bertholet)氏(61)が所蔵しているもので、同氏は、性に対して情熱的だった過去の中国を改めて見直してもらえればと期待している。

 展覧会では、漢(Han)王朝(紀元前206~紀元後220年)から清(Qing)王朝(1644~1911年)にかけての性的な描写を含む同氏の所蔵品が、100点余り展示されている。古代中国における性についてなじみのない来場者からは、驚きの声や忍び笑いも上がっている。

 競売大手サザビーズ(Sotheby’s)が企画したこの「Gardens of Pleasure: Sex in Ancient China(快楽の庭園:古代中国の性)」では、性交渉を描写した7つの小さな陶製の像の他、石やブロンズでできた男性器のオブジェなどが見られる。

 性を描写した中国の美術コレクションとしては世界最多の500点以上を所蔵するベルトレー氏はAFPに対し、露骨な表現も下品だとかポルノだという捉え方をするのではなく、共産主義が台頭し、文化大革命による混沌(こんとん)が生まれる前に同国に浸透していた道教の哲学との調和が表出したものとみるべきだと述べた。

 同氏は、道教ではセックスを幸せと長寿に導くものと位置付けていたとした上で、「中国芸術における性の表現は、哲学的背景を備えているという点で、それ以外の性表現とは全く異なっている」と解説している。

■性表現を禁じた文化大革命

 中国に政治・文化的な激変をもたらした文化大革命(1966~76年)の約10年間に、当局は古くから伝わる物品や建造物といった過去の遺物を多数破壊した。また、宗教も弾圧され、古代の道教や儒教を含めあらゆる宗教の寺院や教会が標的となった。性表現は容認されず、男女は共に中性的な衣類を着用していた。

 このようにかつては極度に保守的だった同国でも、主に都市部の若く好奇心あふれる世代が、親たちが経験してきた過激な共産主義時代とは大きく乖離(かいり)した考え方を持つようになった今日では、性のタブーも緩和されつつある。

 ベルトレー氏は、「もしかしたらこの展覧会が、特に中国の人々にとって、かつて自国に存在した哲学を認識する一助になるかもしれない」と話している。

 5月3日まで開催されるこの展覧会で最も注目すべき作品は、清の康熙帝(Kangxi Emperor)が描かせたという絵画8点セットだという。展示品はいずれも非売。(c)AFP/Aaron TAM