【4月1日 AFP】ウクライナ当局は3月31日、国境付近に展開されていたロシア軍の部隊が一部撤退したと発表した。ロシア政府は、冷戦終結後最悪の状態にある東西対立の緩和を目指す姿勢を徐々に示しつつある。

 この発表の前日には、米国のジョン・ケリー(John Kerry)国務長官とロシアのセルゲイ・ラブロフ(Sergei Lavrov)外相が、仏パリ(Paris)で4時間におよび行われた会談で、政治的提案を交わし、近く改めて協議することに合意していた。

 ドイツのアンゲラ・メルケル(Angela Merkel)首相府も、31日にロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領からメルケル氏に電話があり、軍撤退について個人的に連絡を受けたと発表している。ただしそれ以外の詳細については明かしていない。

 フランクワルター・シュタインマイヤー(Frank-Walter Steinmeier)独外相は、ロシア軍の一部撤退を「事態の緊張が緩和しつつあることを表す小さな兆候」とする見方を示した。

 西側諸国と親欧のウクライナ暫定政府は、2月に親露のウクライナ大統領が退陣に追い込まれたことを受けてクリミア(Crimea)半島を自国に編入したロシアが、ロシアの影響が色濃いウクライナ南東部の制圧も企図しているのではないかという懸念を強めている。

 ロシアには態度軟化の兆候が見られたものの、31日にはドミトリー・メドベージェフ(Dmitry Medvedev)首相が事前通知なくクリミア半島を訪問し、その兆候は打ち消された。同首相は、クリミアで3月16日に行われた住民投票でロシア編入が圧倒的賛成多数で承認されて以降、同半島を訪問したロシア当局者としては最高位の人物となった。

 ウクライナ国防省は、ロシア軍撤退開始のタイミングが、28日夜にプーチン露大統領が米国のバラク・オバマ(Barack Obama)大統領にウクライナ危機について話し合うため突然の電話会談を申し入れたことと一致していたとみられることを指摘している。

 同省参謀部の報道官はAFPの電話取材に対し、「ここ数日、ロシア軍が徐々に国境付近から撤退しつつある」と伝えた。同報道官は、撤退した兵士の数や国境地帯に引き続き駐留している部隊の規模については確認できていないとしている。米国と欧州連合(EU)は先に、ロシアの突然の増派で3万~4万人の部隊が同域に展開していると推定していた。(c)AFP/Dmitry ZAKS