【3月29日 AFP】ケニアでは今月、議会が一夫多妻制を合法化する法案を可決したことを受けて、現代的な価値観やキリスト教の信仰と慣習がぶつかり、激しい論争が巻き起こっている。

 法案の反対派は、キリスト教徒が大多数を占める同国の家族観を脅かすと訴え、また女性議員らは女性の権利を脅かしているとして、ウフル・ケニヤッタ(Uhuru Kenyatta)大統領に対し法案に署名しないよう働き掛けている。先週の決議の際、抗議のため議場を後にした多くの女性議員らの一人は、男性議員らのあからさまな性差別を非難し、「大統領には、署名して法案を成立させてしまうのではなく、議会に差し戻すよう促したい」と語った。

 これに対し賛成派は、法案はケニアの多くの地域で今も多くみられる一夫多妻の慣習を単に成文化するにすぎないと主張している。同国の日刊紙スタンダード(Standard)によると、特に複数の妻を養える富裕層の間で一夫多妻制が普及しており、180万人の女性と70万人の男性が一夫多妻関係にあると推定されるという。

 ある一般の27歳の大卒女性は、法律がどうであれ、大半のケニアの女性は夫が他(の女性)にも目を向けることを受け入れている、「そんなに気にしてはいない。(一夫多妻制が)合法化されようとされまいと、ケニアの男性はどうせ2人以上の女性と法的であろうとなかろうと結婚するのだから」と語った。

 ケニヤッタ大統領はこれまでのところ、この問題について自身の立場を表明することは拒否している。同大統領は自らもキリスト教徒で、その信仰とアフリカ的価値を支持する気持ちの板挟みで難しい選択を迫られることになる。(c)AFP