【3月29日 AFP】自閉症児の脳には障害が点在しており、このことは自閉症という発達障害が胎児の段階ですでに始まっていることを示唆するという米研究結果が26日、米医学誌「ニューイングランド医学ジャーナル(New England Journal of Medicine)」に発表された。

 研究チームは研究結果について、自閉症が出生前に起因することの「直接的な証拠」と説明している。米国における自閉症の発症率は最大に見積もって88人に1人と高いが、未だ治療法が確立されていない。

 カリフォルニア大学サンディエゴ校(University of California, San Diego)の「自閉症COE(Autism Center of Excellence)」主任を務める同論文の共同執筆者、エリック・クーチェスン(Eric Courchesne)教授(神経科学)は、「脳の6層構造の皮質は、出生前に形成される」と説明した上で「自閉症児の大半でこれらの層の発達が阻害されている部分が点在しているのを発見した」と述べた。

 研究チームは、自閉症スペクトラム障害(ASD)と診断された後に死亡した2~15歳の子どもの脳組織を摘出した。子どもたちの主な死因は水死だった。「皮質にはっきりと一貫性のある独特なパターンを表す」ある特定の25の遺伝子セットを探し、自閉症のない子ども11人の脳組織と比較した。

 その結果、自閉症児の脳の91%で、脳の皮質の複数の層でそこにあるべき遺伝子マーカーが欠損しているか、あるいは異常なパターンを表していることが判明した。この組織の混乱の兆候は、脳の中でも社会的機能やコミュニケーション、感情、言語をつかさどる前頭葉と側頭葉の複数の層に点在していた。

 研究チームは、自閉症につながるとみられるこの変化が一部の子どもだけに発生する原因は依然として分からないと述べている。

 一方、障害が点在していることが分かったことで、なぜ自閉症がさまざまな度合いで人に影響を及ぼすのかについて説明がつくかもしれない。また、子どもの一部が早期診断から集中治療によってコミュニケーション能力を高めることについても、機能不全に陥っている脳の部分を克服するために、脳神経の一部は接続の配線を換えることができると考えることで説明がつくかもしれない。(c)AFP/Kerry SHERIDAN