【3月26日 AFP】中国では、大気汚染が原因の死や健康問題によって、最大で毎年3000億ドル(約30兆6500億円)もの医療コストが生じているとする公式報告書が、25日に発表された。報告書では、世界第2位の経済を誇る同国に対し、新たな都市開発モデルへの移行を求めている。

 世界銀行(World Bank)と中国国務院(政府)の発展研究センター(Development Research Center)が共同で発表した報告書は、「中国の大気汚染の大部分は都市部に集中しているため、新たな都市化の波に対応すべく準備を進める中国は、環境面での規制や資源の再分配といった対策をますます早急に実施する必要がある」としている。

 14か月をかけてまとめられた今回の報告書では、同国の悪名高い大気汚染に起因する高い死亡率やさまざまな健康問題が生む医療コストを、年間で1000億ドル(約10兆2000億円)から3000億ドル以上と推定している。

 中国の陳竺(Chen Zhu)元衛生相は昨年12月、英医学誌「ランセット(Lancet)」上で、同国では最大50万人が大気汚染により亡くなっているとの研究結果を引用していた。

 今回の報告書では、汚染された空気は乳幼児の健康に深刻な害を与えることから、大気汚染の長期的影響には、先天性異常や認知機能障害が含まれる可能性があると指摘している。

 また、過去30年間にわたり中国の経済発展に重要な役割を果たした急激な都市化により、通常付随する大規模なスラム街の形成や高い失業率を避けることに成功したとしつつ、「一方で、不平等の拡大や、環境破壊、自然資源の急激な枯渇といったゆがみが顕在化し始めている」とも指摘している。(c)AFP