【3月24日 AFP】夜の闇に包まれたクリミア(Crimea)半島の街角で、黄ばんだ街灯の明かりの中に姿を現したアナスタシアさん(30)は、疲れた表情でこっそりと周囲をうかがいながら、誰かが通りかかる音が聞こえると声を潜めた。「もう、ここに民主主義はないでしょう。プーチンがいる限り」

 グレーがかったブロンドの髪を持つ2児の母アナスタシアさんが暮らすのは、ロシアが掌握したクリミア半島の中心都市シンフェロポリ(Simferopol)西部郊外の住宅地だ。「ここを出ていきたいけれど、アパートの自室を売ることができない。どうしたらいいのか。とにかく、お金がない」とAFPのインタビューに答えた。

 ウクライナ暫定政府の推計では、クリミアには、ロシアに編入されたら脱出したいと考えている人が2万5000人いる。既に、ウクライナ各地の友人や親戚の元に身を寄せた人々もいる。政府は脱出を図る人々の職探しや年金受給のためのホットラインを開設したが、実際に人々を移住させるのは難しい。

 3月16日にウクライナからのクリミア分離とロシア編入の是非を問う住民投票が行われる前は、半島内でもウクライナ残留派の集会が散発的に開かれていた。だが、住民投票以降、ロシア軍と親ロシア派の民兵たちが支配力を強める中で、公然と反対意見を表明する人はいなくなった。