ヘラジカ救って節税も、一石二鳥の取り組み カナダ
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【3月12日 AFP】カナダの自然保護団体が税務当局と手を組み、寂しい独り者のヘラジカたちを救おうという運動を進めている。
環境保護団体ネイチャー・コンサーバンシー・カナダ(Nature Conservancy of Canada)はカナダ東部のノバスコシア(Nova Scotia)州とニューブランズウィック(New Brunswick)州の州境沿いに、野生動物たちが行き来できる、いわば野生の回廊を作ろうと計画している。ニューブランズウィックのヘラジカが、個体数の激減が危惧されるノバスコシアのヘラジカたちと出会って繁殖する機会を作るのが狙いだ。
「ニューブランズウィックのヘラジカがノバスコシアに行けば遺伝子プールが増えノバスコシアでもヘラジカが存続できる」と、ネイチャー・コンサーバンシー・カナダのアンドルー・ホランド(Andrew Holland)氏はAFPに語った。
ニューブランズウィックに生息する健康なヘラジカは2万9000頭を超えるが、ノバスコシアのヘラジカは、寄生虫感染症の流行で約1000頭にまで減った。そこで2013年、その名も「ヘラジカ・セックス・プロジェクト」が立ち上げられた。もっとも、オオヤマネコ、ボブキャット、カモ、クマ、シカなどの野生動物も計画中の「ヘラジカ回廊」を往来することになりそうだ。
これまでにネイチャー・コンサーバンシーは、寄贈や買い上げなどでシグネクト地狭(Chignecto Isthmus)の2060エーカー(約8.3平方キロメートル)以上の土地を確保した。ここには沼地や湖、湿原が含まれている。回廊の完成を目指して同団体は、さらに1730エーカー(約7平方キロ)の土地の確保を目指している。
カナダには生態系の多様性や環境保護を目的とした「エコロジカル・ギフトプログラム(Ecological Gifts Program)」という制度があり、これに適合する土地の贈与は減税対象となる。
この制度の下、これまでにカナダ各地で計1054件、6億3500万カナダドル(約590億円)相当の土地寄贈があり、野生動物の生息地15万ヘクタールの保護につながった。(c)AFP