【3月11日 AFP】英国のフェアトレード基金(Fairtrade Foundation)が2月24日から9日まで、国内スーパーでのバナナの値下げ競争の阻止を訴えるキャンペーンを行った。中南米を中心としたバナナ生産者に支払われる対価は、生産コストを下回っているのが現状だ。

 英国人の多くは、地球の裏側の中南米から輸入されたバナナの値段が国産リンゴの値段の半分程度で売られている現状に、バナナ生産者との公正な取引が行われているのだろうかと疑問に思っている。

 バナナが大好きな英国人にとって、バナナは牛乳やパンと同じくらい必要不可欠な食料だ。英国人1人当たりの年間バナナ消費量は約100本。輸入先はコロンビア(28%)、ドミニカ共和国(24%)、エクアドル(16%)など大半が中南米だ。英国でバナナが多く消費されるようになったのは、冷蔵輸送の技術により遠く離れた原産地からの大量輸入が可能になったためだ。

 欧州諸国の中で英国は唯一、バナナの値段が10年前より下がっている国だ。フランスの国際農業開発研究センター(CIRAD)によると、英国のバナナの値段は2002年は1本18ペンス(約30円)だったが、現在は11ペンス(約20円)と、国産のリンゴの値段の半分程度まで下がっている。

 フェアトレード基金のマイケル・ギドニー(Michael Gidney)最高責任者はロンドン(London)で開いた記者会見で、「小規模の農家やプランテーションの労働者はスーパーの値引き合戦の巻き添え被害を受けている」と述べ、「数十億ポンド相当のバナナの国際貿易は生産者の貧困状態に近い収入に依存している」と話した。

 フェアトレード基金がキャンペーンの一環でロンドンに招いたコロンビアのバナナ生産者、アルフォンソ・カンティロ(Alfonso Cantillo)さんは、バナナ18キロの生産コストは9ドル(約900円)だが、対価は8.15ドル(約800円)と説明。「投資に対する利益はゼロだ。非常にいら立たしい。バナナの値段が下がると私たちの生活水準も下がる。安定した価格が必要だ」と訴えた。

 フェアトレード基金のバーバラ・クラウザー(Barbara Crowther)方針・広報主任は、フェアトレードが農産物の中でもバナナに焦点を当てているのは、「バナナの値段を取り巻く状況が異常だから」と話す。フェアトレード基金によると、卵やパン、砂糖の値段は2002年以降、40~120%上がっている。バナナの場合、欧州連合(EU)が市場を開放したことや、競争法により小売業者による最低販売価格の合意が妨げられていることなど、構造的な問題がある。

 フェアトレード基金はビンス・ケーブル(Vince Cable)民間企業・技術革新・技能相に宛てた書簡で、「バナナの小売価格について早急に調査した上で、生産者と国内の消費者の長期的な利害への影響を評価し、その結果に基づいて対策を取るよう求める」と記した。(c)AFP/Alfons LUNA