ロシアのウクライナ介入、チェコの原発建設にも波紋
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【3月4日 AFP】ロシアのウクライナ介入が3日、チェコの原発拡張事業に参入するロシア企業の数十億ドル契約をめぐるチェコ国内の対立に火をつけた。
ウクライナで親欧米の暫定政権が発足したことを受け、同国南部クリミア(Crimea)半島にロシア軍が展開し実効支配を強めつつある中、チェコの閣僚らはロシア企業による入札の是非をめぐって割れている。
チェコは南部テメリン(Temelin)にある原子力発電所に新たな原子炉2基の増設を計画している。推定80~120億ユーロ(約1兆1200億~1兆6800億円)規模とされるチェコ電力(CEZ)のこの建設事業には、ロシアの原発建設企業アトムストロイエクスポルト(Atomstroyexport)と同国営設計企業OKBギドロプレス(OKB Gidropress)、チェコのシュコダJS(Skoda JS)の3社から成る企業連合「MIR1200」が名乗りを上げており、米大手ウェスチングハウス(Westinghouse)と落札を競おうとしている。
ウクライナにおけるロシアの動きを受け、チェコのマルチン・ストロプニキー(Martin Stropnicky)国防相とイジー・ディーンストビール(Jiri Dienstbier)人権担当相は、ロシアの入札参加に反対を表明した。
チェコの3党連立政権の一角を担う新党「ANO2011」に所属するストロプニキー国防相は「ロシアがやっていることは受け入れられず、ロシアはもはや民主国家ではなく、予測不可能だ」と非難し、テメリンの拡張事業にロシアが参加することを想像するのは難しいと語った。
ディーンストビール人権担当相は同国のウェブサイト上で「外交政策に軍事侵略を用いる国は、チェコ共和国の安全保障にとってもリスクだ」と語った。
しかしディーンストビール氏と同じチェコ社会民主党(CSSD)を率いるボフスラフ・ソボトカ(Bohuslav Sobotka)首相は報道陣に対し、入札には「いかなる政治的基準もない」と述べ「今回の危機を理由にロシアとのすべての通商関係を決裂し、すべての橋を燃やしてしまうことなど想像するのは不可能だ。それこそ非常に愚かなことだ」と述べた。
またCEZの広報も、発注先に関する決定プロセスで問題となるのは経済的、技術的要因だけで「現在のウクライナ情勢は入札に何の関係もない」と述べた。
テメリンの原発は共産主義時代に計画され、建設は2000年に着手された。現在は出力1050メガワットのロシア型加圧水型原子炉VVERが2基ある。(c)AFP