【3月4日 AFP】シベリアの永久凍土層で3万年以上眠っていたウイルスの蘇生に成功したとの研究論文が3日、米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of SciencesPNAS)に発表された。 ウイルスは「巨大」だが無害だという。

 論文を発表した仏国立科学研究センター(National Centre for Scientific ResearchCNRS)は、長期間潜伏していたウイルスの発見によって、凍土に葬られていた未知の病原体が、地球温暖化の影響で目覚める可能性が示されたとして警鐘を鳴らした。

Pithovirus sibericum」と命名されたこのウイルスは、年間平均気温が氷点下13.4度の東シベリア海(East Siberia Sea)に近いチュクチ(Chukotka)自治管区沿岸のツンドラ地帯から採取した、深さ30メートル地点の永久凍土のサンプルから見つかった。

 研究チームはウイルスを解凍し、シャーレで培養を試みたところ、ある特定の単細胞生物にのみ感染したという。

 また、この土壌サンプルに含まれていた放射性炭素から、マンモスやネアンデルタール人(Neanderthals)が地球上を歩き回っていた3万年以上前に、この一帯では植物が生育していたこともわかった。

 Pithovirus sibericumは、ウイルスとしては巨大だ。遺伝子を8個しか持っていないインフルエンザウイルスに対し、この新たに見つかったウイルスは遺伝子を500個ほど持っていた。1.5マイクロメートルという大きさから、電子顕微鏡を使わずに光学顕微鏡で見ることもできるという。

 また、インフルエンザウイルスなどとは異なり、人間や動物に対して害がなく、アカントアメーバ(Acanthamoeba)と呼ばれる特定のアメーバにしか感染しないという。

 研究チームは声明を発表し、今回の発見により、長期間凍土内に閉じ込められていたウイルスの蘇生が可能であることが示されたとし、天然痘のような根絶したと考えられているウイルスの復活はもはやSF小説だけの話ではないと警鐘を鳴らしている。(c)AFP