■意味不明な「論文」を瞬時に作成

 例えばこんなふうだ。「一定時間技術とアクセスポイントはこの数年で、未来学者と物理学者の双方から大きな関心を集めてきた。スーパーページに関する広範な研究を長年重ねた結果、われわれは128ビットアーキテクチャとチェックサムの適切な一体化を確立した」

 図表と引用は科学論文に不可欠な特徴だが、こうした「論文」にも必ず偽の図表と引用が収録されている。SCIgenのケースでは、数十年から数百年前に亡くなった著名な科学者の論文で最近参照されたものがその中に含まれているという。

 SCIgenは、米マサチューセッツ工科大学(Massachusetts Institute of TechnologyMIT)の研究者らが2005年に考案したプログラムだ。

 MITの研究者らはSCIgenを用いて意味不明な論文をでっち上げ、学術会議に投稿したところ、論文は正式に受理された。研究者らは後にこの「でっち上げ」を公表して、誤りを防ぐための措置に欠陥があることを暴露した。

 SCIgenは、次のWebサイトで無償で提供されている:http://pdos.csail.mit.edu/scigen/

 ラベー氏はSCIgenの特徴的な言葉遣いを探すことで、この詐欺行為を発見したとAFPの取材に語った。

 同氏は2010年、SCIgenを用いて架空の科学者「アイク・アントカーレ(Ike Antkare)」が書いたとする偽の論文を102件作成し、学術論文の検索サイト「Google Scholar」のデータベースにそれらを追加した。

 アントカーレはしばらくの間「世界で最も多く引用された科学者」リストの21位にランクされていた。この順位は、その時36位だった物理学者アルバート・アインシュタイン(Albert Einstein)よりも高かった。

 今回ラベー氏が見破った偽論文は、2008年~2013年に開かれた学術会議に投稿されたものだ。同氏はこの発見に至った研究をまとめて、2012年に学術誌「サイエントメトリックス(Scientometrics)」に発表した。偶然にも、同誌の発行元もシュプリンガーだ。

 同氏によると、偽論文の中には、一見より本物らしく見せるために、序章や結論を人の手で書き換えているものもあるという。こうした作為の目的はおそらく、うわべだけの審査を欺くためだろう。