【2月26日 AFP】欧州9か国の病院を対象に行った調査により、看護師が労働過多だと患者の生命に悪影響がおよぶ恐れがあるとの主張を統計的に裏付ける結果を得たとする論文が25日、英医学誌ランセット(Lancet)で発表された。緊縮財政下で医療関連予算の削減を迫られる国にとって敏感な問題に触れる研究だ。

 研究チームは、英イングランド、ベルギー、フィンランド、アイルランド、オランダ、ノルウェー、スペイン、スウェーデン、スイスの300の病院を対象に、手術を受けた患者の生存率を、看護師1人あたりの患者数および看護師の学歴と比較した。対象となった患者は人工股関節・膝関節の手術や盲腸、胆のう炎など、ごく一般的な手術を受けた50歳以上の患者42万人余り。

 その結果、入院から30日以内の死亡率の国別平均は、1.0~1.5%と低かった。だが国内を見ると、病院別の死亡率は1%未満から7%以上までと、大きな差があった。

 高い死亡率と相関していた2大要素は、看護師の仕事量と学歴だった。患者の死亡リスクは、看護師の担当患者が1人増えるごとに7%増加し、大卒の看護師数が10%増えるごとに7%低下していた。

 論文は「経費削減のために看護師数を減らせば、患者に悪影響がおよぶ恐れがある」、「看護師の学士レベルの教育に重点を置くことが、死亡患者数の減少につながるかもしれない」と指摘している。

 研究を率いた米ペンシルベニア大学(University of Pennsylvania)看護学部のリンダ・エイケン(Linda Aiken)教授によれば、米国で行われた調査でも、今回と同様の結果が出ているという。(c)AFP