医療アプリで進化するモバイルヘルス分野
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【2月22日 AFP】スマートフォン(多機能携帯電話)によって、電子メールやビデオゲーム、写真の共有が指先の動き一つでできるようになった──だが、その同じスマートフォンを特製のケースに接続すれば、手のインパルス(電気信号)から心電図を作成し医師に送信することさえ可能だ。
米ノースカロライナ(North Carolina)州に暮らすE・B・フォックスさん(57)は、昨年10月から不整脈を記録するためにAliveCor社の心拍数モニターとアプリを使い始めた。もし何か問題があると感じたら、すぐに医師に電子メールで記録を送り、診断してもらうことができる。「少なくとも1回の診療分は節約できたね」とフォックスさんは語る。
■目標は医療コストの削減
心拍数モニターは、急成長するモバイルヘルス業界の進化を示すほんの一例だ。医師や開発者らがモバイルアプリと携帯機器によって目指すのは、医療費の削減だ。
従来、病院や保険などの医療業界は、患者数や治療件数など「量」にこだわってきた。だが医療制度が変化する中、業界は医療の「質」の定量化を目指している。そこで、患者が30日以内に病院を再訪したかどうかといった要素が注目され始めた。今後は保険金の支払いにも影響を及ぼすかもしれない。
中心となる考えは、患者自身がモバイルアプリなどのツールを使って自分の健康を記録することで、診療の必要回数を減らすことができ、1回の診療をより効果的にすることができるというもの。
米カリフォルニア(California)州のスクリップス・トランスレーショナル科学研究所(Scripps Translational Science Institute、STSI)では現在、医療費とモバイル医療機器との関連性についての研究を実施中だ。特に慢性疾患のある患者を対象に研究している。
患者にiPhoneと一緒に、血圧計や心拍数モニター、血糖値メーターなどを提供し、高血圧や不整脈、糖尿病の記録を半年にわたって取ってもらうという研究だ。患者自身が症状を監視することで、必要のない病院訪問や、救急治療を受ける回数などを減らすことができるかどうかを調べる。
■変わらない問題「医師の指示に従わない患者」
研究はまだ途上だが、研究主任のシナモン・ブロス(Cinnamon Bloss)氏はすでに古典的な問題に直面している。スマートフォンのおかげでいくら容易になっても、患者が医師の指示に従わないことだ。「患者の抱える疾患に合わせた無料の携帯電話とモニター機器を提供しているのだが、多くの人は面倒がってしまう」という。
アプリの評価サイト「iMedicalApps.com」の創設者、イルティファト・フセイン(Iltifat Husain)氏も、患者が治療計画に従わないことが健康面にも金銭面にも大きな影響を及ぼしていると指摘する。「医師の指示に従わない患者のせいで、医療保険制度に巨額の費用がかかっている。こういう事例は毎日のように見かける」とフセイン氏は語った。
■アプリの向上
一方でフセイン氏はモバイルアプリ自体の改善は急速に進んでいると指摘する。「この1、2年で、医療アプリの品質は急速に向上している」
これには昨年9月に米食品医薬品局(Food and Drug Administration、FDA)がガイドラインを発表したことも大きく影響している。フセイン氏によれば、このガイドラインにより、いかがわしいアプリのリリースが減った。「初めは西部劇のような世界だった。今は町に保安官がやってきた、といったところだ」とフセイン氏は語った。(c)AFP/Rachel ROGERS