【2月21日 AFP】米交流サイト(SNS)大手のフェイスブック(Facebook)は、携帯端末向けメッセージングサービス「WhatsApp(ワッツアップ)」を190億ドル(約1兆9000億円)で買収することを発表し、すでにライバル企業たちが激しい競争を繰り広げているアジア市場に名乗りを上げた。

 ワッツアップの評価額は、現在の1か月当たりの利用者4億5000万人が、やがて10億人を超えるとの見通しに基づいている。ワッツアップはスマートフォン(多機能携帯電話)以外の低価格携帯電話でも利用できるため、急成長する新興市場の携帯端末分野にフェイスブックが参入する原動力として期待されている。

 だがワッツアップと同様のサービスはすでに各国にある。特にアジアでは、中国で「WeChat(ウィーチャット、微信)」、韓国で「カカオトーク(Kakao Talk)」、日本で「LINE(ライン)」が市場を独占。アナリストらによると、これらのサービスは提供する製品や戦略により、ワッツアップよりも高い収益を上げる潜在能力を持っている。証券大手CLSAは、中国のWeChatの企業価値を350億ドル(約3兆5000億円)、LINEの企業価値を140億ドル(約1兆4000億円)と評価している。

 市場調査会社オーバム(Ovum)の予測によると、2014年内に世界のソーシャルメッセージング量は69兆件に達し、利用者数は18億人に達する見通し。

「東南アジアでは、(メッセージングサービス)市場シェア獲得の激戦が起きている」とオーバムのネハ・ダリア(Neha Dharia)氏はAFPの取材に語った。「ワッツアップはそれらの市場において、(SNS市場における)フェイスブック並みのシェアを獲得できるだろう。結果、他の競合企業が成長するのはより厳しくなる」とダリア氏は予測した。

■WeChat

 WeChatは無料のインスタントメッセージングサービス。中国のIT大手テンセント(Tencent)が開発した携帯アプリで、2011年1月に公式にサービスを開始した。中国以外にもインドやスペイン、南アフリカなどを中心にユーザーを増やしており、世界の月間アクティブユーザー数は昨年9月に2億7200万ユーザーを突破した。

 WeChatは主な携帯プラットホーム向けにテキスト、写真、動画、音声メッセージのサービスを提供している。また、ゲームやオンライン決済、タクシーの予約サービスなども提供している。

■LINE

 LINEは2011年にインスタントメッセージと無料音声通話のアプリとしてサービスを開始し、世界中で3億5000万ユーザーを獲得。年内に5億ユーザーに達することを目指している。親会社は韓国のNAVER(ネイバー)。

 親しみやすい画面で日本で大成功を収めた他、タイや台湾、スペイン、中南米で人気を広げている。ラインは「スタンプ(stickers)」(テキストメッセージに挿入できるイラスト)機能で有名。有料スタンプの売り上げが収益の中核を成している。

■カカオトーク

 2010年にサービスを開始したカカオトークは、韓国のスマートフォンユーザーの95%が使っている無料アプリで、全世界でのユーザー数は1億3000万。来年にも新規株式公開を行うと言われており、時価総額は20億ドル(約2000億円)に達する可能性もある。

 メッセージや画像、音声、動画を送信する機能の他、カカオ向けのオンラインショップを利用できる。オンラインショップの開始により、昨年の収益は2年前の460億ウォン(約44億円)から、2300億ウォン(約220億円)に急増した。マレーシアやフィリピン、インドネシアなど東南アジア市場でのシェア獲得を目指している。

■バイバー

 バイバー(Viber)は、2010年に創業したキプロスの企業バイバーメディア(Viber Media)が開発し、日本のIT企業・楽天(Rakuten)が9億ドル(約900億円)で買収した。ユーザー数は2億8000万。

 無料のテキストメッセージと電話、ビデオメッセージを提供している。また最近、デスクトップPCから非バイバーユーザーの携帯電話への通話も可能となり、スカイプ(Skype)の市場に参入した。LINEやWeChatのような収益モデルを開発できるかどうかについては疑問の声も上がっており、買収発表の翌取引日には楽天の株価が最大で13%下落する出来事もあった。(c)AFP/David WATKINS