【2月25日 AFP】科学界ではこの数十年間、奴隷貿易やナチス(Nazi)の優生学を正当化する主張を覆す努力がなされてきたが、遺伝情報の解析が進歩した近年は、新たな科学的人種差別の時代に突入しようとしている──。米国科学振興協会(American Association for the Advancement of ScienceAAAS)の年次会合でこのような指摘があがった。

 米シカゴ(Chicago)で開かれた米国科学振興協会(American Association for the Advancement of ScienceAAAS)の年次会合でこの問題を掲げた人類学者たちは、「ネオレイシズム」といわれる新たな形態の人種差別が科学研究の場に根を下ろしつつあるとし、「人種」という概念が存在し、生物学的、習性的、文化的観点から異なっているという主張を広めていると説明した。

■人種隔離時代、再来の危険

 米ペンシルベニア州立大学(Pennsylvania State University)の人類学教授、ニーナ・ヤブロンスキー(Nina Jablonski)氏は「ゲノム科学は医療の個別化を大きく助け得る」と述べた上で、しかし「悪用」されれば、人間の能力には肌の色や民族的背景に基づき生まれながらに差があるという考えを広める恐れもあると警告した。

 そうした一例としてヤブロンスキー教授は、遺伝的にあらかじめ決定されている学習能力に基づいて子どもたちの学校を分けて異なる学習法を実践すべきと主張する新研究があることを説明した。

 さらに米国で黒人と白人の学校が分けられたり、アフリカ系は劣っていると考えられていた人種隔離の時代を引き合いに出し、「かつて聞いたことがある主張で、極めて心配だ。これを提唱している教育専門家たちは肯定的な観点から述べているようだが、実際に採用されれば、容易に歪曲されかねない」と警鐘を鳴らした。