【2月18日 AFP】多くの女性は「生まれるのが男の子でも女の子でも関係ない」と言うかもしれないが、作り出される母乳には大いに関係あるようだ──。ヒトやサルなどの哺乳類を対象とした複数の研究では、赤ちゃんの性別によって母乳の成分や量が異なることが分かっている。

 このなかで共通しているのは、男児が飲む母乳には脂質またはタンパク質が多く含まれ、エネルギー源が豊富なのに対し、女児の母乳は量が多いということだ。

 米ハーバード大学(Harvard University)の進化生物学者ケイティー・ハインド(Katie Hinde)氏が米国科学振興協会(American Association for the Advancement of ScienceAAAS)の年次会合で15日に行った発表によると、この違いが生じる理由については、さまざまな説があるという。

 例えばアカゲザルでは、母親から社会的地位を受け継ぐ雌の子どもに与えられる母乳には、より多くのカルシウムが含まれる傾向がある。ハインド氏は、「娘により多くの母乳を与えることで成長を促進させ、若い時期に生殖を始められるよう適応している可能性がある」と説明した。

 これに対して雄の場合、どれほど多く子孫を残せるかはどれほど多くの雌を勝ち取れるかにのみ依存しているため、雌ほど早く生殖能力を獲得する必要はない。また雄のサルは、子どもだけで遊ぶ時間が長く、雌よりも母乳を飲む時間が短いため、エネルギー源がよりつまった母乳を必要とする。

 ヒトの母乳にも同様の違いが見られるが、その理由ははっきりとしていない。ただ、赤ちゃんが子宮の中にいる時点でこの準備が行われていることを示す証拠はあるという。

 ハインド氏は先週、子ウシと引き離された後(子ウシは通常、出産から数時間後に母ウシから引き離される)のウシの母乳に、胎児の性別が長期間にわたり影響を与えるとした研究結果を発表している。

 149万頭のウシを対象に、2回の授乳期間(各305日間)の母乳の量を調べたところ、雌のみを出産したウシの母乳量は、雄のみを出産したウシと比べて平均445キロ多かったとされる。ただ、子の性別によるタンパク質や脂質の量の違いは見られなかったという。

 ハインド氏は、ヒトの母乳が子の発達に与える影響については、まだ分かっていないことが多いと話す。しかし、さらに研究を進めることで、市販される粉ミルクの質を向上することができるかもしれないと期待を寄せた。(c)AFP/Mira OBERMAN