【2月15日 AFP】サウジアラビアでは、バレンタインデーであっても店頭に赤いバラやハート形チョコレートは見つからない。宗教警察が目を光らせているからだ。しかしそれらの品は、店の奥やカウンターの下に巧みに隠されており、バレンタインデーを祝いたい人々はひそかに希望の品を購入していく。

 同国は、イスラムの教えでは男女の同席は固く禁じられ、公の場での愛情表現は絶対的なタブーだという考え方を市民に対して厳格に適用している。

「ムタワ(Muttawa)」と呼ばれる宗教警察(正式名:勧善懲悪委員会、Commission for the Promotion of Virtue and Prevention of Vice)は、バレンタインデーの取り締まりパトロールを12日に開始。チョコレートや花、小物などを売る店に立ち寄っては、赤やハート形のものをはじめ、毎年恒例のロマンチックな「異教徒の祝祭」に関係したあらゆる物品の販売を控えるよう警告していく。

 生花店を営むフセイン(Hussein)さんは、店のショーウインドーを、禁じられている赤いハートマークの代わりに白いバラやオレンジのアヤメ、紫のアジサイで埋め尽くした。「赤いものは全て店内に隠しました。こうしておけば、宗教警察のパトロールが来ても注意されるものは何一つ見つかりませんから」

 フセインさんによると、多くの女性は宗教警察を恐れてバラを電話で注文するといい、1束20リヤル(約540円)の赤いバラがこれまでに350束売れたという。

 聖職者とその教えが広く尊重される超保守社会のサウジアラビアでバレンタインデーを祝うのは一握りのリベラル派だけ。マイクロブログのツイッター(Twitter)に数十万人のフォロワーを持つある聖職者は、同国内でバレンタインデーを祝う者は「異教徒のまねがしたいだけ」といさめた。(c)AFP/Assad Abboud